第13話 駒



 三組の田中と五組の高橋を進化合成させて、使役モンスターを作り出す。


 作り出された使役モンスターは別次元の生き物となってもう普通の人間には見えることはない。


 鵜沢タクミはそうやって周りの人間を進化合成させていた。合成された人間は見える世界からは消えてしまう。しかし世に蔓延るモンスターを倒すにはそうするしかないのだ。倒すべきモンスターも普通の人間には見えない。モンスターは人知れず人間を乗っ取り繁殖している。



 鵜沢のスマホにはいつの間にかとあるアプリが入っていた。そのアプリで人間の写真同士を合成させるとその人間を進化合成させることができた。この合成アプリがどういう力によるものなのかは全然分かっていない。


 これは俺に課せられた使命なのだ。


 合成させられた人間はこの世では存在が消え失踪してしまう。

だから鵜沢の学校では生徒の失踪が頻発し問題となっていた。



今日も学校が終わり、鵜沢は帰宅するため昇降口へと行く。その時肩に強い衝撃がくる。

「何やってんだよ邪魔だ」

サッカー部の宇津井だった。宇津井は吐き捨ててその場を去っていく。


 はい、合成素材決定。


 素材にする人間は誰でもいい。鵜沢の気分で誰を合成素材にするかは決めていた。


 帰り道を歩いていると前に、女子グループがおり、その中に月岡ナナミが見えた。学校一の可愛さで笑顔からはその魅力が溢れている。


 鵜沢はこっそりと月岡の写真を撮っていた。しかしそれは当然合成素材のための写真ではなく、鵜沢自身が愛でるためのものだった。

「はあ可愛いなあ。月岡さんは」画像を見て呟く。



 今日も鵜沢は街を歩き回る。街中にモンスターが彷徨い歩くからだ。彷徨うモンスターを見つけると鵜沢は作り出した使役モンスターを取り出し敵モンスターと戦わせる。その様子は普通の人間には全く感知できない。


 今日はモンスターが多い。鵜沢が持っている使役モンスターは全部使いきってしまった。

「こんなこともあるのか。もう終わりにして帰ろう」


 しかし一人のモンスターに出くわしてしまった。

 まずい。こいつは俺を標的にしているぞ。ズンズンと俺を追って来る。しかし戦わす使役モンスターはもういない。一回戦わせると一日のインターバルが必要なのだ。

 今合成して新しい使役モンスターを作り出さないと。しかしこんな時に限って人が見当たらない。ようやく一人のオバちゃんを見つけて写真を撮る。だがもう一人が見つからない。モンスターはもう鵜沢を乗っ取るために鵜沢の肩に手をかけようとしていた。


「くそっ、仕方ない……」

鵜沢はさっき撮ったオバちゃんとあの学校一の可愛さの月岡を合成することに決めた。写真がそれしかない。自分の命には代えられない。


 スマホを取り出し二人を合成させようとする。


 しかし二人を合成させることができない。アプリには「エラー」と出る。


「何故なんだ!」


 モンスターが鵜沢を乗っ取ろうとする正にその時、別のモンスターが現れそのモンスターを襲い掛かり倒してしまった。


 そのモンスターは使役モンスターだった。

使役モンスターの後ろにはあの月岡がいた。


「月岡さん……、あなたもそうだったのか……」


 月岡は厳しい表情でこちらを見つめる。普段の愛らしい表情とは真逆だ。こんな表情は見たことがない。


「私はあなたより上位のランクだから合成はできないのよ」


「はっ?……」何を言っているんだこいつは。


「……使役モンスターを作り出してくれる使える駒だと思っていたが、まさか私を合成素材にするとはね。もう用済みね」

月岡は近くにいたオバちゃんの写真を撮りスマホをいじった。



 そして俺は知らないオバちゃんと進化合成させられた。











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