第12話 ヒーローの矜持



 光速戦隊ライトニング、リーダーのレッドは怪人を倒していた。緑の返り血を浴びて仮面が汚れる。今年になってもう13人目の怪人だ。しかし守るべき市民は一人もいない。


 砂の怪人サキューンのスナスナ光線によって全ての人間は砂にされてしまった。レッドはたまたまその時ヒーロースーツを着用していたので砂にされることはなかった。他の戦隊仲間も砂にされてしまったのかその日以来見かけることはない。レッドは日々世界を放浪しながら怪人を倒し続けている。


 砂の怪人は何処にいるのか、見かけたことはない。あいつを倒し世界中から怪人を消滅させる、それだけがレッドの生き続ける理由だった。

 今日もレッドはさまよい続ける。怪人を倒すために。生き残っている人間を見かけたことはなかった。


 レッドが歩いていると谷の向こうから煙が上がっているのが見えた。

「煙? 自然発火か? それとも人が……」

 リーダーは急ぎ山の斜面を駆け上り谷を見下ろす。


 そして見えたのは一つの村だった。怪人たちの。


 怪人たちは集落を作り生活をしていた。中には怪人の子供もいる。

 人間がいなくなり戦う相手がいなくなった怪人たちはとうとう普通の社会を作り出したようだった。

 レッドはその様を呆然と眺めていた。地球はもう人間の星ではなくなったのだ。これからどうすべきなのか。あの村を丸ごと潰すべきなのか。いやしかしそれは……、それこそ怪人がやってきたことじゃないのか? 普通に生きている社会を破壊する。今のこの世界では俺が怪人だ。



 レッドはその村を見なかったことにした。山の斜面をトボトボと降りていく。

 その時、村の方から叫び声が聞こえた。レッドは戻り村を見てみる。

するとそこには怪人破壊兵器の「ジェノサイド」がいた。我々の組織が作り出したロボットだったが、パワーのコントロールが効かなくて失敗作として放置されていたものだ。


 「あいつもこの世界で怪人を倒し続けていたのか……」


 ジェノサイドが怪人の村を暴れ回る。しかし怪人たちは戦わずに逃げ惑うばかりだ。何故? もしかして、怪人たちは戦いの能力を失っている? 人間と戦う必要のなくなった怪人たちは戦いの能力を失い、生活維持の能力を獲得したのか。

 ジェノサイドは暴れ回り殺戮を止めない。このままではこの怪人村は全滅になるだろう。



 ジェノサイドの持つ武器が怪人の子供を捕えようとする正にその時、レッドの剣がその攻撃を受け止めた。体が勝手に動いていた。これが俺なりのヒーローの本能だったんだろう。

光速剣シャイニングアタックでジェノサイドを攻撃する。光の速さの攻撃を受けジェノサイドは破壊された。

 

 レッドは呆然とする怪人たちを後に村を離れた。砂の怪人サキューンを探す旅は続く。









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