第9話 靴下の喧嘩
バス停でバスを待っていると一人の男が話しかけてきた。
「バス来ないですね」
「ええ、まあそうですね」確かに今日は遅い。
「私最近悩みがありましてね。聞いてもらえますか?」
(なんだこのオッサンは……)
「悩みというのは不眠症なんですよ」
「……ああ、そうですか」
「何故不眠症かというとね、靴下同士の喧嘩がうるさいんですよ」
「靴下⁉」
「そうなんです。右の靴下と左の靴下が毎夜喧嘩してうるさいんですよ」
(……聞き間違えたかな?)
「右の靴下が資本主義者で左の靴下が社会主義者なんですよ。だから仲が悪くて悪くて」
(……)
「右の靴下が、社会主義が間違っていたのは歴史が証明しているというんですよ。それに対し左の靴下は、今の時代はAIがあるので計画経済は破綻しないというんですよ」
「ああ、そうですか」まともに相手したら駄目なタイプの人だな。
「それで私の対して答えを出せと言うんです。どちらが正しいと思いますか? 私はどちらも理解できるし否定はしたくないんですよ」
「はあはあ成程ね。正しいのは資本主義者の方じゃないですか? だってクリスマスは資本主義でないと成立しないでしょ」
「……というと?」
「中にプレゼントを入れて貰える靴下が一番の勝ち組でしょう?」
「成程! その発想はなかった」男は大いに納得したようだった。
その時丁度バスがやって来た。
「私はもう一本後のバスなんで」靴下の男は言った。
「そうですか。ではこれで」
バスに座るとバスは走り出した。
今の時期は変な人が現れるな。全く、靴下同士が喧嘩するなんて馬鹿らしい。
「靴同士が喧嘩するならまだ分かるが。……こらっ、おい。お前ら言ってるそばから
喧嘩するんじゃないよ」
了
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