第8話 部族の英雄



 あるところに、対立し何百年も殺し合いを続ける二つの部族があった。


 A族とB族、人口ではA族の方が多かったが、それでもB族は強い精神力を発揮し、二つの部族の力は拮抗して、争いが終わることはなかった。

 

 B族の精神力の強さには元となるものがあった。それは千年前の英雄の存在であった。


 千年前に存在し、一人で何百人も倒したというB族の伝説的英雄。その存在が彼らに勇気を与え続けていた。



 そんな折、一人のA族の戦士がタイムワープホールを見つけた。暗いその穴の中に入ると、千年前にタイムワープするのだ。

「千年前の世界なら丁度あのB族の英雄がいるはず。そいつを殺せばこのいつまでも終わらない戦いに終止符を打つことができる」


 A族の戦士は覚悟を決めてタイムワープホールに入った。




 B族の英雄は簡単に見つかった。見かけの特徴が一致して、呼ばれる名前も一緒だった。英雄はまだ若かった。結婚もしてないくらいの年齢だ。相手は伝説的英雄とは言えまだ若い、A族の戦士も部族の中ではトップの戦士だ。

A族の戦士は英雄が一人になる時を見計らって襲い掛かった。


 奇襲は成功し、A族の戦士は勝利した。

「俺たちの勝利だ!」A族の戦士は勝どきの声を上げる。


 しかしB族の英雄がこと切れたその瞬間、地球上からそのA族の戦士と全てのA族は消え去ってしまった。











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