第4話 罪悪感ウイルス
「よし、やっと完成したぞ」
博士は、コルクで栓をした一つの試験管を掲げていた。
「博士、それはどういうものなんですか?」助手が尋ねる。
「これはな、人間の罪悪感に反応するウイルスだ」
「罪悪感?」
「人間が他者を殺した時に生まれるような強い罪悪感に反応して、その人物の心臓を停止させてしまうのだ」
「ほう、それはすごいものですね」
「そうだこのウイルスに罹患した人間が社会全体に広がれば、人殺しが捕まらないなんてことがなくなる。結果、社会から殺人事件が消えてしまうのだ」
「なるほど」
「分かったら助手よ。このウイルスを人の集まっているところでバラまいていくのじゃ」
「分かりました」
助手は素直に指示に従い、公共機関などでそのウイルスを散布した。
♦ ♦ ♦
「大変です。起きて下さい博士」
助手が慌ててやってきた。
「なんじゃ騒々しい」博士はベッドから起き上がる。
「国民の半分が死んでしまいました」
「なんじゃと! 何があった⁉」
「実はですね。ツイッターで炎上芸をやっている人間がいまして、その人間が叩かれ過ぎて自殺してしまったのです。そしたらその人物を叩いてた人たちが、その自殺に罪悪感を感じて心肺停止で死んでしまったんです」
「なんじゃと……、そんなとこになるとは。ワシが作ったウイルスで国民の半分が死んでしまうとは、ワシはなんということをしてしまったんじゃ……」
「……」助手は博士をじっと見る。
「……なんじゃ、その目は」
「博士は心肺停止しないですね」
「……」
了
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