第3話 奇妙なお使い
携帯の画面に映っていたのは一通のメール通知画面だった。
駅から少し離れた裏通りのコインロッカーの横。そこに一つの携帯電話が落ちていた。
なんの気はなしに俺はその携帯を取ってみた。するとそこには一通のメール通知画面が映っていた。ロックも何もかかっていない。
深く考えもせずに俺はそのメールを開いた。
「コインロッカーの324番を開けろ」
とだけ書いてあった。
コインロッカー? このすぐ隣にあるコインロッカーのことか。
俺は周りをキョロキョロとするが、人通りはまばらで俺の方を見ている人間は誰もいない。
取り敢えず見るだけ見てみようと思い、俺はコインロッカーの324番を探してみた。
324番は確かにあった。そして鍵もかかっていない。俺は中を開けてみた。
中にはビニール袋に包まれた何かがあった。
嫌な予感がしつつもせっかくなのでそのビニール袋を開けて見ると中には一つの財布があった。
女物の小奇麗な財布。中を見てみるが中には何も入っていなかった。
なんだろこれは?
どうしたものか悩んでいると突然拾った携帯がバイブレーションに揺れた。
驚いて見てみるとまた新たなメール通知が着ていた。
「その財布を持って東に見える赤いビルの裏に向かって下さい。そこに黒い箱がある」
なんだこいつは俺のことを見てるのか? しかし周りを見渡すも誰も見つからない。
まあいいか。どうせ暇だしこの変なお使いに付き合ってやろう。財布を自分のバッグに入れ赤いビルに向かう。
赤いビルの裏はダクトや室外機がある、誰も入り込まないような場所だった。
探してみると確かに黒い箱があった。注意して探さないと見つからないような位置だった。
黒い箱を開けるとそこには眼鏡があった。小さめの黒フレームの眼鏡。
これもまた意味が分からないな。
またメールが来るかと思いきやなかなか来ない。と思っていたらまたメールが来た。
「次は北に100メートル進んだ灰色の建物の工場の裏手に向かって下さい。そこにも黒い箱がある」
工場の裏手は何もない空き地と川が流れていた。探してみるとまた黒い箱を見つけた。
箱を開けると中には革のケースがあった。
15cmぐらいの革のケース、それなりの重みのものが入っている。なんだろうこれはと思っていると突然声をかけられた。
「どうもこんにちは」
背の低いサングラスをかけた中年の男。
「メールの指示に従って下さってありがとうございます」
「……あなたがメールの送り主なんですか?」
「そうです」
「一体なんでこんな……」
「詳しい話は私もできません。私も雇われただけですので。それではメールの指示で手に入れた物を持ってあの白いマンションの404号室に行ってもらえますか?」
男は川の向こうにある白い大きいマンションを指差した。
「そこで説明と謝礼があるそうなんで。いいですか404号室ですよ。携帯はもういらないので私が受け取ります」男は素早く携帯を取り上げる。「じゃあ私はこれで」
それだけ言い残すと男はさっさとその場を後にした。
俺に質問をする間も与えなかった。
仕方ない。ここまできたらあのマンションに行くしかないか。
橋が大分離れていたのでマンションは結構遠かった。
エレベーターを上り404号室に向かう。ドアの前に立つが別に普通の一室だ。
緊張しつつもベルを鳴らす。
が、何も反応はない。何回もベルを鳴らすも反応がないのでドアノブをガチャガチャとやってみたが鍵がかかってる。
どうしたものか。
ここまできてどうしたらいいか分からない。持ってきた物だってあるし。
と部屋の前で悩んでいたら、二人のスーツを着た男に声をかけられた。若い男と中年の男だ。
「すいません。この家の人に何か用事ですか?」
「いや用事って程のものでもないんですけどね」
答えに窮した俺は取り敢えずその場から去ろうとした。
「ちょっと待って下さい」
二人の男は立ちふさがる。
「この部屋の住人はね、先週殺人事件に合い殺されてしまったんですよ」
「…えっ、殺人……」予想外過ぎる言葉だった。
「我々は警察の者です」と言いながら男たちは警察バッジを見せてきた。
言葉が出ない。
「すいませんが身分確認と持ち物検査をさせてもらいます」
刑事はバッグを寄越すように手を出してきたので渡す他になかった。
「先輩、これは……」若い方の刑事がバッグから革のケースを取り出す。ケースを開けるとその中にあるのはナイフだった。
「えっ……」
「被害者の部屋からなくなっていた眼鏡と財布もあります」
「はっ?……」
「ちょっと署までご同行願います」二人の鋭くなった目がこちらをみた。
了
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