第17話 『悩み事相談』 その4
ぼくは、明らかに異次元に引き込まれていったのです。
それは、彼女が勤務していた会社のようでした。
しかし、どうも、おかしいのです。
なにしろ、窓の外を見ると、自動車が飛んでゆくのです。
それも、整然として、ですよ。
あきらかに、一定のルールに基づいて飛んでいるのです。
現代社会において、こんなことになってるお国は、まだないはずです。
じゃあ、ここはどこなの?
ぼくは、そばに恨めしそうに漂っていた彼女に聞きました。
「ここ・・・どこ?」
「西暦3051年の日本です。」
「は? え? 未来・・・・・」
「はい。」
「ちょっと、まったあああ~~~~。そおりゃあないでしょ。未来は管轄外ですよ。」
「来てしまえば、いっしょです。」
「ぎえ~~~~。未来にきちゃたの?」
「はい。もうすぐ、悲劇が起こります。」
「え?」
「ほら。来た!」
そう言われる間もなく、大型飛行自動車が、真正面から暴走してきて、この事務所に突っ込んだのです。
彼女は、即死でした。
でも、他の人は、意外にも、みな助かったようなのです。
「おかしいでしょう。こうした事故に備えて、人間のからだには、突っ込んだ車や窓の破片が当たらないように、重力制御されているのに。なぜ、あたくしだけが、たすからなかったのでしょうか?」
「いやあ、そう言われましても。・・・・・」
「課長のせいです。あたくしは、課長さんとお付き合いしていました。結婚の約束をしていました。なのに、突然、断わられました。ふられました。社長のお嬢様との縁談が持ち上がったからです。」
「そりゃあ、お気の毒に。でも。それと事故が関係あるのですか?」
「あるはずです。あたくしにだけ、空中自動車がぶつかる様に細工したに違いないのです。証拠があります。」
「証拠?」
「はい。夜中に、侵入して・・・幽霊ですから・・・セキュリティ-データを見ました。まちがいなく、あの時だけ、間違いなく、改ざんされていました。でも、どうやったのか、原因は、自動車の側のエラーとされました。あたくしだけ、自動車側が、うまく認識できず、会社側の装置とマッチングできなかったと。」
「?????チンプンカンプン・・・・運転手さんは?」
「いませんわ。自動運転だから。会社は保険金をもらいました。あたくしは、ひとりぼっちの身です。天涯孤独。保険の受け取り人は、課長になっていました。」
「はあ・・・・・そりゃあ、ひどいなあ。疑われなかったの?」
「まあ、そこらあたりは、あたくしが知る由もありませんが、この会社は、保険会社の最高のお得意さんですし。」
「そおらあ・・・あやしいなあ。でも、ぼくに、どうしろと?」
「あなた、あの名高い『呪いの時計さん』でしょう。あっちこっち探し回って、あなたの時代にやっと見つけました。」
「なだかい?・・・・ですか?」
「あなた、ものすごく有名になるのです。」
「ええ~~~~。なんで?」
「それは、未来の秘密です。あなたにしてほしいのは、にっくき課長・・・・いまはもう部長です。アッと言う間に昇進しましたから。・・・を、呪い殺してほしいのです。狂気のうちに、めちゃくちゃまるめて、踏みつけて、おだんごにして、ゴミ箱に『ぽい』してください。カッコ悪~~~い、恰好で。でたらめに、むちゃくたに、ぎたぎたにしてさしあげて、ください。 🔥🔥🔥」
「こあ~~~~! それはもう、あなたご自分でやったらいかが?」
「それが、できないのです。課長が、いえ、部長が、外国の呪術師に頼み込んで、あたくしの妖力を封じてしまったのですもの。」
「はあ・・・・・・。ここ、ほんとに、31世紀?」
「やってくださらないと、21世紀には帰れませんよ。」
「なんで? 妖力はないのでしょう。」
「そういうのは、出来るのです。だいいち、ちゃんと、ここには来たでしょう?」
「はあ・・・・なあんという、ご都合主義というか。何と言うか。」
「よろしくお願いいたします。願いが成就したあかつきには、あなたに、時間移動の能力を差し上げましょう。」
「え! ほんとに! ううん。そらあ、時計さんにとっては、すっごく魅力的な。要は、あいつを呪い殺せばいいのですね?」
「はい。」
「わかりました。」
ぼくは、引き受けてしまいました。
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