第14話 『悩み事相談』 その1

 それから、ぼくは、ご主人に対する攻撃を慎重に、なおかつ素早く検討しておりました。


 ぼくは、先ごろ、一階から二階に移動してきております。


 でっかい『パンダちゃん』も、二階に上がり、お隣にどかっとすえらえました。


 あすは、新しい攻撃を実行すべし、と決断し、『同盟』の仲間たちに伝えようとしていた、その深夜の事。


 またまた、ぼくの前に、なにやら怪しい影が現れたのです。


 今回も、やはり、どうやらぼくになにかを言いたそうなのですが、右に左に、行ったり来たりして、神様たちのようには、すっかりと定まりません。


 しかも、姿かたちが不安定で、うっすら現れては消える、という感じで、何者なのかがはきりしません。


 そこに、またまたタイミングが良くない事に、ご主人がふらふらと、部屋に入ってきました。


 まあ、ここはご主人の部屋ですから、入って来るのは結構なのですが、これがまた、幽霊みたいに足取りが定まっておりません。


 どうやら、例によって、睡眠薬を飲んだけれど、上手く寝られずに、ふらふらと、お家の中を彷徨っているみたいです。


 電灯が付いたので、そのはっきりしない影は、消えてしまいました。


「ふあ~~~~~~~。」


 ご主人は、大あくびをし、椅子に座り込みました。


「まあ、眠たいなら、お布団に入って寝たらどうなんですか?」


 と、言ってみても、まあ、聞こえないか。


 パソコンに灯を入れ、なんだか書き始めました。


「あの状態で、まともな文章、書けるわけがない。」


 あの、でっかい、『パンダちゃん』も、薄目を開けて、様子を窺っています。


 向こうの部屋では、ご主人のお守り係を、ずっとやってる、『くまさん』と、でっかい『パンダちゃん』ほどではないけど、それなりに『大きいパンダ』さん、その他たくさん、が、心配そうにこっちを眺めています。


 彼らは、『同盟』には絶対に加わらない、ご主人の『良き仲間』たちです。


 とくに、『くまさん』は、ご主人のお母上が作ったものなので、ご主人の弟か妹というところです。


 ご主人のお布団のお隣には、奥さんが寝られるように、もう、一組、お布団が敷いてありますが、お正月以来、寝に来たことがありません。

 

 で、彼らが見張っているので、その目の届くところでは、あまり大きなことはやりにくい・・・やれないことはないけど・・・です。


 下手すると、ぼくが派手に怨まれてしまいますからね。


 しばらく、パソコンをばちばちやったあと、ご主人は、ようやく、またふらふらと立ち上がり、どこかに行ってしまいました。


 どうやら、相当ゆらめきながら、階段を下りたみたいです。


 ぼくが手を下さなくても、自分で勝手に落っこちるんじゃないか、と心配になります。


 ほんとうに、幽霊みたいな感じです。


 それで、部屋は、また暗闇に包まれたのです。



  **   **   **   **   **



 それから、しばらくして、あの影が、帰って来たのです。


 ぼくは、思い切って、声を掛けました。


 悪霊の場合もあるので、あまりやりたくはないのですけれど。


「あなた、なにか、ぼくに用があるの?」


 すると、その影さんは、ようやく思い切った、という風に立ち止まりました。


 それから、こう言ったのです。


「あの、ここで、悩みごとを、聞いてくださるとか・・・」


 若い女性の声です。


「はあぁ~~~~?」


 なんだそりゃ。


 ぼくは、少し大きめに、時を刻みました。



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