第13話 『呪いの神さま』 その2

 もちろん、多くの人間の意志が固まった『神様』に勝とうとするのは、かなり無理があります。


 闘うのは、絶対に、損です。


 下手したら、ぼくも呪われてしまいます。


 『呪いの時計さん』が呪われたのでは、面目丸つぶれです。


 なので、ここは、ご遠慮いただくのが、最善の方策であります。


『あの・・・高貴なる『神様』でありますから、『呪いの時計さん』の分際で、抗う事はできませんです。しかし、ぜひ、ここはお考え下さい。あなた様方は、おそらくこの人の職場がらみの恨みを受け継いでおられるのでしょう。しかし、この人は、すでに退職し、お給料も削減され、その分、かなり返納もした様ですし、また自ら仕事を辞めたあと、その後も体調が良くなくて就職もせず、ぶらぶらとしておりまして、老い先もそう長くなく、すでに、職場からは断絶され、また奥さんとも別居状態になるということで、社会からも戒めを受けております。さらに、この『呪いの時計さん』に見込まれて、さらにさらに、ぼくは、おおくのモノたちと『同盟』を結び、連日、つぎつぎと呪いの火の手を浴びせております。ゆえに、神様のような、お忙しい、高貴な存在の方のお手を煩わすこともなく、やがては自ら滅びるのです。ここは、ぜひ、不肖『呪いの時計さん』にお任せ下さい。」


「ふむ・・・たしかに、忙しい事は事実じゃ・・・。また、さらに、我々が自ら手を下すのは、いささか不憫ではあるな。人事は人事に任せるというのが、また、常道でもあろう。いかがかのう・・・」


 男神様が尋ねました。


「いやあ・・・呪いは呪いゆえ。甘やかすことは、なりますまい。まあ、でも、奥さんから離れていることは、分かっておりましたが、そこは、多少気の毒ではあるのじゃが・・・、まあ、あなたがそうおっしゃるのならば、10年離れてみるのはいかがか? その間、我らもいささか、この世の状況を見て回ろうぞ。なにしろ、このダメ男の周囲では、楽しい事も無きゆえに。」


 女神様が答えたのです。


「おおお。それはよい。では、10年、離れておるゆえ、『呪いの時計さん』殿が、処置せよ。10年後、まだ生きておったら、我らが手を下そう。」


「はは。かしこまりました。」


 こうして、この二体の神様は去ってゆきました。


 やれやれ・・・ぼくの面目は保たれたのですが・・・・


 まあ、10年かあ。


 長いようで、短い時間です。


 おそらくは、呪いの元となった人びとの恨みが、その間に薄くなれば、この神様がたは、天に帰って行かれるだろうと、思います。


 がんばらなくっちゃ。


 なんだか、ご主人を、またもや、助けてあげた様な気がしなくもないなあ。




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