第10話 『同盟』 その5

 そうして、その日がやってきました。


 その夕刻、あたりはすでに薄暗くなってきた時、大量のたまごさんたちは孵化を始めました。


 そうして、玄関のひさしの下、壁、植木の枝・・・・いたるところが、毛虫さんたちでいっぱいになったのです。


 でも、大体は感覚の鈍い、いつも、ぼ~~としている、うつ気味の、まして、あまり外には出ないご主人は、このくらいなら、直ぐには気づきません。


 ポストを覗きに行ったり、早朝配達されたお弁当箱を玄関に出したり、何度かお庭に出入りしたあと、ようやく、その異変に気が付いたのです。


 すでに、いくらかの毛虫さんが、そっとご主人の背中を這ったりもしました。


 そうして、いっせいに、襲い掛かったのです。


 「あぎゃ~~~~! なんだあ、これはあ?」


 慌てたご主人は、お家に駆け込み、掴んできた殺虫剤を右手に持ち、柄の長いほうきを左手に持って、降りかかる毛虫さんと闘いながら、まだ残っている卵の撤去にもかかりました。


 「うわ~~~~。かわいそう・・・・・ごめんね、ごめんね。」


 とか、人の好いご主人は、そんなことをつぶやきながら、大量の毛虫さんに殺虫剤を吹きかけます。


 すると、苦しくなった毛虫さんは、一斉に糸を吐きながら、ひさしや、木の枝から垂れ下がって、成仏します。


短い命です。


 しかし、ご主人は、あまり気が付いていませんが、防御態勢をしっかりしていないので、たくさんの『毛』とか、そうしたものが、ご主人の肌にばんばんと、付着してゆくのです。


 ふふふふ・・・


 これこそ、ぼくの狙いなのだ!


 その翌日から、ご主人の肌は、あちこちがまっかに膨れ上がり、その圧倒的なかゆみに、のたうち回ることとなったのです。


 耐えかねたご主人は、行きつけの皮膚科さんに行きました。


「こりゃあ、ひどいなあ・・・きれいに直るかしらあ????」


 と、お医者様に言われたんだそうです。


 ま、背中もお腹も腕も足も、まっかっかで、みるも無残な光景です。


 体中にステロイド系のお薬を塗りまくる、我がご主人さまは、いかにもユーモラスで、さすがのぼくも、ちょと、可哀そうに思ったほどです。


 しかし、これは、まだ序ノ口です。


 明日は、すかさず、次の手を打ちます。



 ぎやっ! ひひひひひひぃ! ひっひひっひひっ!



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