第7話 『同盟』 その2

 ご主人様を、まともに餌食にしようと持ちかけても、うまくゆかないことは分かっています。


 そこで、『お遊びですよ~~~。ご主人様、さみしそうだから、みんなで、遊んであげるのですよ。』


 と、そういう理由で、仲間に勧誘したのです。


 これは、策略通り、わりとうまく進みました。


 まあ、もちろん、堅物なやつもいて、無視された例もあるけれど・・・(たとえば、電気カミソリ君なんかは、そうです。『安全第一』とか言って、乗ってこなかったのです。また、ご主人様が子供時代から大事にしてきた、『くまさん』とか『パンダさん』とかは、いつも十分遊んでもらっているので、断わられました。)


 まあ、そういう変わったのもいますが、大方は、『遊んであげるなら、いいんじゃないかなあ・・・』、ということで、大体お家の中のモノたちの8割以上の協力が得られることになったのです。


 『どんな、遊びをしてあげるの?』


 古い方の『やかんくん』が聞いてきました。


 『まあ、まず、『しりとり競争ゲーム』をしようと思うんだ。』


 『しりとり競争ゲーム? ってなに。』


 『ええとね、まず、御主人さまは、知っての通り、中学校の先生から『教師になって以来うん十年、おまえみたいなぶきっちょは初めて見た!』と言われたくらいの、人類史上最高の、お墨付きのついた『ぶきっちょ』なんだ。そこで、まず、君にお水を入れようとしたら、落っことして、床が水浸しになるだろう?』


 『ふんふん、よくやるね。』


 『すると、床を拭きにかかるけど、ついでにお皿もよく割るし、また、こんどは、お尻がひっかっかって、しょうゆビンさんがひっくりかえるんだ。』


 『え?ぼくがかい?』


 『そうそう。そうすると、ご主人様は、あわてて、君を抱えて、走るだろう。それで、こんどは、洋服のすそが、机の端っこにいる道具箱君をひっかけて、ひっくり返るんだ。すると、ご主人様は、バラバラになった鉛筆君や、ホッチキス君や、電池君や、その他沢山の道具君たちを拾うのに、もう一生懸命になる。すると、床を拭くのを忘れるんだ。しばらくして、おふろを入れるの忘れてたとか、ぶつぶつ言いながら、お湯を入れるから、お風呂の栓くんは、そっと抜けてやるんだ。そうると、いつまでたっても、お湯はたまらない。で、台所に戻って、びちゃビちゃの床に、こんどはお皿君が落っこちるんだ。』


『じゃあ、僕、割れちゃうから、いやだ。』


『ああ、それなら、『お水をいれてレンジにかけてちんしたら、ラーメンが出来る』くん、がおっこちればいいや。君は、落っこちても壊れないから。』


『ふうん・・・』


『そうやって、順番に落っこちたりひっくり返ったりして、遊んであげるんだ。』


『おもしろそう!!』

 

 『冷蔵子』さんがいいました。


『でもさ、それって、いじわるじゃないかなあ?』


 アメリカから来た巨大なラジオさんが、心配そうに言いました。


『”エイプリル・フール”みたいなもんなんだよ。』


『はあ・・・・そうなんだ。日本でもやるんだね。』


『そうさ。』


 ぼくは、上手いこと言いながら作戦を立てました。

 

 でも、やはり、最後の仕上げは、ぼくがやります。


 今度は、この前みたいには、失敗しないようにね。


 『ひひゃひゃひゃ、ふひゃひゃひゃひゃ・・・・・・・!』



  ************  ⏰  ************










 
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る