第6話 『同盟』 その1

 というような感じで、ぼくは家中のさまざまなものたちに、『同盟』を結成するように呼び掛けたのです。


 自分たちの利益や便益の為にぼくらを作っておきながら、すぐに新しいバージョンを作り、ぼくたちは『ポイ』してしまう人間たち。


 まあ、そういう意味から言えば、ご主人様などは、そうしたぼくたちを再利用してくれる良い人であります。


 しかし、そうは言っても、いまぼくたちには、ご主人様以外に恨みを晴らす相手がいないのです。


 聴くところによれば、あるお国には、かつて地球を破壊するような力がある『爆弾さん』だった仲間が、ひっそりと住んでいるお家もあるらしいと聞きます。


 でも、彼らは固く閉ざされた場所にいて、周囲からは連絡が出来ないようなのです。

 

 もう、『爆弾さん』としては役に立たず、といって他に使い道もなく、ただいつ来るかわからない終末の時を待っているのです。


 まあ、そこにゆくと、ぼくらは幸せな方です。


 きょうも、ご主人様は、9Vの四角い『電池さん』よりもさらに小さな、昔の雑誌の広告によく出ていた『ラジオさん』を修理していました。


 鳴らない状態で、ネット買いしたらしいんです。


 でも、どうやら問題点を発見し、鳴るようになったと、ひとりで喜んでいます。


 この世の中に、まったく貢献するところもないのに、よくやります。


 夕べも、同じことをやっていましたが、それは、直すと言うより明らかに壊しているという雰囲気でした。


 でも、結局のところ、鳴るようにはなったらしいところは、ご主人の不思議なところです。


 職場でも、動かくなったコピー機くんの頭を「よしよし、いい子だね」とご主人様が撫でたところ、動き出したと言う話を盗み聞きしました。


 もっとも、一回きりだったそうですが。


 まあ、でも、こうしてぼくがしゃべっていることからも、むしろそうしたことはあって当然なのだ、と、お考え下さい。


 あなたのお部屋のテレビさんも、DVDプレイヤーさんも、CDプレイヤーさんも、鏡さんも、パソコンさんも、みんなあなたを、毎日じっと観察しているのですから。


 あなたは、それから逃げることは出来ないのです。


 ふふふふ、ひひひひひひ!




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