第3話 『協力関係』 その1

 人間さんは、あまり気が付いていないらしいですが、お家の中のさまざまな『もの』たちは、一定のコミュニケーション関係をもっているのです。


 新しいお友達がやってくると、みんなで探り合ったり、ごしょごしょと話しあったりして、誰が声をかけるか決めるのです。


 もちろん、そうじゃなくて、スパッと声をかけてしまう性格の仲間もいます。


 ぼくのように、深い『呪い』を持っているものは、もちろん、警戒はされます。


 しかし、つけいるスキは、あります。


 といいますのも、もし、埃はかぶっていても、みんな、このおうちのおかげで、雨や風から守ってもらっていることは事実なのですから、やがて、いつの日か、このおうちが崩壊し、外に放り出されてしまう恐怖というものは、みな持っているのです。


 だから、このご主人のように、奥さんとも別居中で、子供さんもないおうちは、まさにその『危機』が目の前に迫ってきているわけなのです。


 ぼくにとっては、実に『好都合』な状況です。


 それは、仲間の危機意識をあおり、『呪い』の実現に、利用することができるからです。

 

 ぼくは、これまでの失敗から、このご主人は、甘く見てはダメだと判断しました。


 あまりにも、ぱっとしない人生だったおかげで、彼には『呪い』に対する柔軟な対応ができる能力が、自然に備わっているようです。


 好い事ばかりの人生だったかたは、意外と『呪い』に弱く、ばりっ!と、一瞬にして砕けてしまうことが、割合多いものです。


 そこで、ぼくは、おうちのなかでの仲間づくりに励むことにしたのです。


 この種の『呪い』の実現は、あせってはなりません。


 綿密に計画し、密やかに実行するのです。


 相手が気が付かないうちに、じゅわじゅわとむしばみ、そうして、静かに実現させるのです。


 むふふふふふっふ!



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