第6話 元幼馴染
佳菜子からの強烈かつ、間違えた告白文書を読まされて。
ただひたすらに沈黙が流れていた。
はっきり言って、どうしようもないぐらいに、だ。
まさか仮にも俺が美少女に好かれるとかどういう事やねん。
そんなに魅力無いぞ、俺。
因みに佳菜子自身は逃げる様に、わ、私、下におりますです。
とか言って、慌てて去って行った。
逃げたなあの野郎。
俺だけ小っ恥ずかしいままで話を逸らしに行きやがった。
くっ、俺も逃げたいのに。
「しかし、魅力ねぇ」
俺がボッチ宣言してボッチになる前の懐かしい記憶が蘇る。
好きだった幼馴染の女の子の記憶が、だ。
そんな幼馴染は体調不良が多く、都会に引っ越した。
文通をしようとしたが、それもいつか途切れて。
それから5年経ってしまったが。
会いたい気持ちは有ったりもするが、先ずは体調は?元気か?と聞きたいもんだな。
取り敢えずは、だ。
確か当時はそいつも俺を好きとか言っていた。
ガキの思惑だろうけど。
まぁ、先ず有り得ないかな。
以心伝心という言葉はこの世には無いのだ。
「.....」
そうこうしていると、義妹が出来てしまってしかもその義妹に好きって。
俺はこの先、どう接したら良いのだろう。
なんか.....マジでどうしたら良いんだろうな。
とても接しづらい。
「.....落ち着いただろうし、取り敢えずは.....」
下に降りるか。
それから考えようと思って、コップを持つ。
そして立ち上がって、扉に行って。
扉が飛び出してきた。
ガァン!
顔面強打した。
何だコラ!マジでふっざけんな。
俺はその様に思いながら、赤くなったであろう鼻を擦りながら激昂する。
「何やってんだテメェ!」
「あ、ご、ごめんなさいです!.....えっと、あっ、と。迎えに来たです!みんなで食事に出るそうです!」
.....あ?食事だ?
何でそんないきなり。
俺は顔面を摩りながら考える。
仲良くする為か?
「仲良くなる為らしいです!私も大賛成でした!師匠!」
予想通りの回答であった。
俺は盛大に溜息を吐く。
全くな、クソめ。
「.....行くぞ」
はい!師匠!と言ってルンルンな感じで階段を降りて行く。
ってか、師匠はやめろってってんだろ全く。
何度も言ってるけど。
☆
「この近所にファミレスが有るらしいからファミレスに行こうと思う。優雅くん。何か他に希望はあるかい?」
「無いっす」
「.....優雅。まだ.....気にしているの?」
喜久さんの車で移動する、俺達。
ってか別に、気にはしてない。
だけど何か、何かが嫌なんだよな。
それはきっと、毛嫌いだ。
「師匠.....」
「なんだよ。.....おっと、着いたぞ」
気が付くと真っ暗な暗闇にネオンが浮かんでいる場所に着いた。
ファミレスである。
俺達は車から降りてそのまま早速、ファミレスに入る。
メイド服を改造した様な感じの服を纏った店員が挨拶してきた。
「いらっしゃいませ」
「えっと、4人で」
「4名様ですね。畏まりました。此方のお席にどうぞ」
俺は興味無さげに周りを見渡す。
家族連れ、勉強している奴、カップ.....ル?
思いっきり見開いた。
驚愕したっつーか、いや、マジに。
咄嗟に俺は全員を置いて駆け出してしまう。
「し、師匠!?」
そんな佳菜子の声がしたがそんなものより、何故、居る!?
この街に俺の元幼馴染が!
俺はその席に座っている、カップルを見る。
踏ん反り返って座っているチャラそうな金髪の男が俺を睨んできた。
「なんだお前」
そのチャラ男の目の前に腰掛けている、四つ葉のクローバー型の髪留めを横に垂らした茶髪に付けている女の子。
間違いない、成長はしているが.....こんな特徴的な髪留めをしているのはコイツしかいない!
俺を見て酷く驚愕している女の子。
「君.....優雅くん!?」
「.....あ?知り合いなのか?香澄」
「.....あ、いや、知らないわ」
黒髪から茶髪に染めたのか。
俺はその様に思いながら。
香澄を静かに見る。
ってーか、知らない訳が無いだろ、お前!
改めて声を掛けようとしたのだが。
それを他所に立ち去ろうと立ち上がる、香澄。
何処に行くんだ。
「行こ!吉継くん!」
「あ.....!」
チャラ男の握る、香澄。
俺は咄嗟にそんな香澄の手を、と思った次の瞬間。
バシィッと思いっきり手を弾いた。
チャラ男が、だ。
「俺の彼女に手を出すな。何だお前は」
「か、彼女だと.....」
俺は痛みに悶えながら、背後に居る佳菜子に支えられながら。
チャラ男と肩を組んで幼馴染は去って行った。
何でだ!香澄!?
「ちょっと!みんな注目していますからです!落ち着いてです!師匠!間違いじゃ.....!?」
間違うものか、ってか。
あの髪留めといい、間違い無くアイツは香澄。
白鳥香澄。
俺の幼馴染だ。
それも髪留めは俺が.....くっ。
「くそっ。どういう事だよ!あんなチャラ男と付き合うなんて」
絶対に香澄。
お前を忘れたりはしない。
俺はお前が好きだったんだから。
お前の癖と言い声といい。
「.....」
俺は複雑な思いを抱きながら。
周りの店員の視線、客の視線を浴びつつ。
母親と喜久さんの元に戻った。
このままでは迷惑になると思うからだ。
☆
「びっくりしたよ。一体、どうしたんだい?」
「昔の.....連れが居ました。それで.....失礼しました」
えっと、香澄ちゃんに似てたわよね?
ペペロンチーノを少しだけ食べながら母親は話す。
そうだな、いや。
間違いなく香澄だ。
だがどういう事なんだよマジで。
5年ぶりに会ったらこのザマかよ。
「って言うか、師匠の幼馴染って.....可愛いですね」
オムライス片手にジト目で見てくんな。
お前が俺を好きなのは分かるが。
しかし、何故あの状況に、そして何故この街に?
「.....」
目の前のドリアを見ながら。
俺は少しだけ悲しく思いながら。
ドリアを食べ.....取り上げられた。
「はぁ?返せお前!」
「ふーんだ!師匠のバカ」
横を見てツーンとする、佳菜子。
ああ、面倒クセェな!
俺は頭をボリボリ掻きながら。
溜息を盛大に吐いて。
考えた。
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