第161話第百十六段 寺院の号、さらぬよろづの物にも
(原文)
寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は少しも求めず、ただありのままに、やすく付けけるなり。
このごろは深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。
人の名も、目なれぬ文字を付かんとする、益なき事なり。
何事もめづらしき事をもとめ、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。
(舞夢訳)
寺院の名前や、それ以外の全ての物に名を付けるにあたって、昔の人は少しも余計な趣向を凝らさず、ただありのままに、素直に付けたものである。
しかし、最近の名付け方は、深く考えて才覚を示そうとして名付けるように感じ、実によろしくない。
人の名前に、見慣れないような文字を付けようとするのも、無益な事だ。
何事においても、珍しいことを求め、奇抜な説に飛びつくのは、浅学の人がしがちな事である。
奇をてらい、人目を引こうと、珍奇な名前を付けるのは、実に煩わしい。
人の名前においても、それは同じ。
そんな名前に飛びつくのは、軽薄な浅学の人ばかり。
「名前」は珍奇で立派でも、その中身が程度が低ければ、全く無意味。
山手線新駅の名前も、なかなか珍奇、とてもシンプルとは言い難い。
子供の名前に、複雑な漢字を用いて、外国人の名前を付けるような親がいるけれど、付けられた子供は、書くのにも面倒、それがイジメの原因になることもあるようだ。
一度名前を付けると、簡単には変えられない。
やはり、よくよく考えて付けるほうが、後々には問題が少ないのではないだろうか。
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