第154話第百十一段 囲碁・双六好みて
(原文)
「囲碁・双六好みて明かし暮らす人は、四重・五逆にもまされる悪事とぞ思ふ」と、ある聖の申しし事、耳にとどまりて、いみじくおぼえ侍る。
(舞夢訳)
「囲碁や双六が好きで、それに夢中になって生きる人は、四重五逆以上の悪事をしていると思う」と、某聖がおっしゃられたことが、今も耳に残り、印象も強い。
※四重五逆:仏法における重悪、重罪。
四重:四重罪。殺生、偸盗、邪淫、妄語。
五逆:五つの罪。父を殺す、母を殺す、阿羅藩(最高の境地に達した聖者)を殺す、僧侶の和合を破る、仏身を傷つけるなどの罪。
趣味でたまたま遊ぶ程度の囲碁・双六なら、さして問題はない。
しかし、一日中、それしかせず、それが続くようになると、まさに中毒。
それに加えて、金を賭けたりするようになると、その身を亡ぼすこともありうる。
現代で言えば、賭博にのめり込み、正気を逸した生活を送る人を想定すればいい。
あまりマスコミ報道はなされないけれど、パチンコ店の駐車場には、時折首つりがあるようだ。
これも常軌を逸して、遊びにのめり込んだ結末、
遊ぶためにサラ金、闇金に金を借り、またパチンコをして、大損。
結局借金は払いきれず、督促も怖ろしい。
その絶望と恐怖から逃れようと、自ら命を絶つまでに、追いつめられる。
某聖の言葉から、そんな哀しい事例を思い出してしまった。
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