第110話第七十八段 今様の事どもの珍しきを

(原文)

今様の事どもの珍しきを、言ひ広め、もてなすこそ、またうけられぬ。

世にことふりたるまで知らぬ人は、心にくし。

いまさらの人などのある時、ここもとに言ひつけたることくさ、物の名など、心得たるどち、片端言ひかはし、目見あはせ、笑ひなどして、心知らぬ人に心得ず思はする事、世なれず、よからぬ人の、必ずある事なり。


(舞夢訳

最近の珍しい話題を言い広め、もてはやすことも、また気に入らない。

世間で過去の話題になった時くらいまで、その事を知らないでいる人のほうが、奥ゆかしく好ましいと思う。

その場にはじめて顔を出した人の前で、(前からいる)自分たちの間でよく話に出る物事や名前などを、その意味をわかっている者同士で、思わせぶりにその一部だけを言い合い、目くばせをするとか笑い合うとかする人たちがいる。

そんな事をして、意味が不明な人に、困惑をもたらすことばあるけれど、そういう事は、世間を知らず程度の低い人が、必ずやる事である。



時流の話を面白がり、大騒ぎするような人より、少々浮世離れしていて、「へえ、そんなことがあったの?」と聞くくらいの人の方が、落ちついていて好ましい。

簡単に言えば、軽薄に大騒ぎするだけの人は、中身が無い人なのだろうか。

ただ、これくらいでは、大きな問題ではないけれど、次の「新来の人をないがしろにする」ような人たちである。

新来の人が、新しく出た場所で、様子がつかめないのは当たり前の話であって、訳が分からない話を、コソコソとして見たり、目くばせをして笑い合うなど、新来の人には困惑であり、不愉快でしかない。


ママ友たちのいじめで、公園デビューができないとか、そんな事例を思い出した。

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