第60話第四十段 因幡国に
(原文)
因幡国に、何の入道とかやいふ者の娘、かたちよしと聞きて、人あまた言ひわたりけれども、この娘、ただ粟をのみ食ひて、更に米のたぐひを食はざりければ、「かかる異様のもの、人に見ゆべきにあらず」とて、親許さざりけり。
(舞夢訳)
因幡国の、なにがしのとか言われている入道に娘は美人の評判が高く、たくさんの男性から求婚されたけれど、ただ粟だけを食べて、米のようなものを全く食べなかったとのこと。
かの入道は、
「こんな異様な者は、他人の妻になるべきではない」
として、結婚を認めなかったと言う。
粟か、栗か、誤読か誤記か、異文があるらしい。
つまり、米を主食としないので、美貌の娘であって、求婚者が多くいても、入道の親は手放さなかったとの話。
その理由が、どこまで真実なのかは、不明。
入道の親には、意中の婿がいて、それを迎えたくて、故意にそのような噂を流したのかもしれない。
いずれにせよ、奇妙な伝聞を、そのまま書いただけのような、あるいは源氏物語の明石入道と明石君の連想が少しあるのだろうか。
遠い因幡国の人の奇妙な口実なので、興味を覚えただけなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます