第52話第三十五段 手のわろき人の

(原文)

手のわろき人の、はばからず文書きちらすはよし。

みぐるしとて、人に書かするはうるさし。


(舞夢訳)

字の下手な人が、それを気にせずに、書きちらすのは好ましい。

みっともないと思って、他人に代筆させるのは、迷惑なことになる。


もしかして、兼好氏は、代筆を頼まれる人だったのだろうか。

そして、兼好氏は、それをあまり好きではなかった。


「貴方が字が下手だからといって、私がいつでも代筆させられるのは、面倒で迷惑」

「貴方が自分で書いてくださいよ、気にしないで」


短い文章ではあるけれど、そんな風に解釈した。


たいていは、年寄りが若い人に、代筆を頼むのだと思う。


「口は動くが手は動かさず」

「暇な人ほど、他人に用事を言いつける」


現代社会でも、よく見られる光景でもある。

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