第25話:長距離、クルーズ旅行2

 2013年8月10日、夜6時、リスボンのヨットハーバーを出て、北に進路を取り、動きだし、ペ二シェ岬の沖を通る頃には、日が暮れて、星が見えた。子供達が、「あ、一番星、見つけたと言うと、どこどこ」と言って、はしゃぎだした。その月を見て、やけに、でっかくて、明るい月だなーと言って、夜空に、子供たちの目が釘付けになった。


 その後、「お腹空いた」と、言うので、美鈴さんが、「テーブルに、パンとバター、ジャム、ジュース、水を出して、氷入れを持たせて、みんなセルフサービスでね」と言うと、子供達が、めいめい、好きなものを選んで、取って、食べ始めた。その後、トレーに入れて、運転手の、お父さんのところへ、奥さんの美鈴さんが、どうぞと、ジャム付きのパンとバーターを塗ったトーストを持っていくと、ありがとうと言い、運転しながら、夕食を食べた。


 そうして、時間が過ぎていき、子供達が、「流れ星だと、大きな声で叫ぶ」と、美鈴さんが、その方向を指さすと、素晴らしい流れ星が、目に映った。「何か、お祈りしなくっちゃ」と言うと、大笑いになった。そして、1時間も過ぎると、子供達は、ベッドで雑魚寝した。すると美鈴さんが、塚田守のところへ来て、昔話を始めた。


 あれは、2006年の2月3日、みぞれが、雪に変わった寒い日だった。「突然、電話が鳴り出ると、御主人が交通事故に遭って亡くなった」と言われ、倒れそうになった時、「隣で、冷静に、あなたが、いろいろ指示してくれたわね、もうあれから7年が経つんだわ」と、つぶやいた。


 あの時は、ホントに、どうして良いかわからず、途方にくれていた。その脇で、いろいろ面倒見てくれたわよね。「本当に助かったわ」と言い、「葬式が終え、喪が明けたら、結婚しよう」と、子連れの私に言ってくれたわよね。「本当にうれしかった、まさに、地獄に仏といった感じが

したわ」。その後、私の店に大学生のアルバイトを探してくれたり、漫画喫茶を考えてくれたりして、店をつぶさなくて済んだわ。


 その後、あなたの家が、地元の名家と言うことがわかり、お金に不自由しないで済んで、結婚したら、すぐに、子供が出来て、次々と3人の子に恵まれた。「私って、多産系なのかしら」と、笑った。でも、「1人も、身体の不自由な子供が出来なくて、神様に感謝しなくちゃ」と言った。


 その後、あなたは、「実の子も、他人の子も分け隔て無く、面倒見てくれたわね」。それによって、私は「どれだけ救われたか、わかりゃしない」と、涙ぐんだ。その話を聞いて、「俺って、子供が好きなだけさ」と言い、「子供の未来って、無限大じゃないか、その可能性を大事にしてやらなきゃね」と言うと、「そう言う優しいところが本当に好き」と頬にキスした。


 「満月の夜って、本当にロマンチックだな」と言うと、「そうね、なんか、宝塚の舞台にでも上がったような、良い気分ね」と、小さな声でささやいた。「海の上でなければ、その気になっちゃいそー」と笑った。「こんな素敵な時間が持てて、本当に幸せだ」と塚田守も、つぶやいた。

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