もう、イヤラシい殿方ですこと♪

 郎党二人は四人の娘達に、体を洗われつついんぐりもんぐりされ、情けない悲鳴を上げていた。

 オレは重季さんを促し湯から上がると、二人を生贄として置き去りにし野営地へと戻る。重季さんに飯を食わせねばならない。


 幸い、誰かが気を利かせてくれたらしく、我々人数分の飯が確保されていた。

 雪絵がオレの碗に狸汁をよそってくれた。お絹はなかなか積極的で、自ら匙を持ち飯を重季さんの口へと運んでやっている。


「お絹。わしは自分で食う。お前も自分の飯を食え」

 謹直な重季さんは、お絹の振る舞いに当惑しているようである。

わたくしは後でよろしゅうございます。重季様はお疲れでしょうから、じっとなさいまし。妾がたんと食べさせて差し上げますゆえ」

 重季さんの当惑も何のその、お絹は笑顔で世話を焼いている。傍からは、ふたりしてイチャついているようにしか見えない。


「重季さん。オレは九州征服を目指す」

 四人の腹が満たされた頃合いで、オレは口を開いた。

「なんと……。いや、よう申した。それでこそ我らが御大将おんたいしょうでございまする」


「権守家遠さんは、まるでアテにならん。お歳を召しておられるゆえ、この地で大人しく暮らしたいそうだ。豊後守は平清盛だから何かと厄介だ、どこか豊後国外に移動し好きにやってくれ……と言うておった」

「まあ……、それは先日、六条判官様のお手紙をお渡しした折に察しましたわ」


「そうか。いずれにせよ、他に依るべきアテがなかろうと、我々自らの手で拠点を作る。然る後に九州の諸勢力を我が手におさめる。そのつもりで、大いに励んでくれ」

「心得申した」


 雪絵とお絹が、ぽかんと口を開けて、オレと重季さんの顔を交互に眺めていた。

「雪絵、お絹。今の話は他言無用ぞ」

 そう声をかけると、二人ははっと我に返ったようである。


「なんとまあ……まだお若いのに、頼もしゅうございますこと」

 雪絵がオレの手を握り、オレの肩にしなだれかかる。

 暫く彼女は、オレの腕や腿を撫で回していたが、ふと、オレの耳元に唇を寄せ、

「ちょっとだけ……そこまでお付き合い下さいまし」

 と小声で囁く。


「何事だ!?」

「その……小用を催しました」

かわやなんぞ、この周囲には無いぞ」

「だからほら……もう、イヤですわ。獣でも出てきたら恐ろしゅうございますから、ちょっとだけお付き合い下さいまし」


 そうか仕方ない、と立ち上がる。すっかり忘れていたが、当世の女性は便所が無くとも、そこらで平然と立ちション出来るんやったわ。――

 及川奈○と明日花キラ○がオレに付いて来ようとするのを手で制し、ふたりだけで少し離れた場所へと向かう。


「ほれ、その辺でせい」

 と、草藪を指差し雪絵に促すと、彼女は草薮の陰でするかと思いきや、いきなりオレの横で草薮に尻を向けて着物の裾を捲った。


 月夜に照らされ雪絵の丸く白い尻が浮かぶ。

 すぐに若い娘らしい生命力溢れる快音を響かせ、小水の飛ぶ様が見えた。ちょっと赤い顔で俯いている雪絵が、妙に色っぽい。


「八郎様、そないに見つめられると恥ずかしゅうございます。……八郎様も、今ここでなさいまし」

 着物の裾を戻すと、いきなりオレの着物の前をまくろうとするのである。

「うわ。何すんねん!!」

 雪絵は、オレのを的確に捉えた。


「おや……。何故なにゆえ斯様かようたぎっておられるのやら」

「知らん知らん」

「さてはわたくしのお尻を見て……。もう、イヤラシい殿方ですこと♪」

 相棒のをサワサワと撫で回す。撫で回しつつオレの顔を下から覗き込む雪絵の目に、妖しげな光が灯っているのを確認した。


「八郎様をお連れしたい処がございます。さあ、こちらへ」

 雪絵に手を引っ張られ、川沿いを暫く歩く。

 数百mばかし歩いた先にあったのは、板壁に囲まれた小さな浴場だった。


「この地はまことに、湯に恵まれておりまして……。女共はこれにて湯浴みするのでございますのよ」

 どうやら女達しか知らない、彼女ら専用の風呂らしい。


 雪絵はたちまちオレの衣服を脱がし、自らも全裸となった。そして両手で、女の秘めやかな箇所をそっと覆い隠すのである。

「ここまでは、おなごの役目。ここからは殿方のお役目でございます。さあ……」

 そう言うと雪絵はオレを見上げ、そっと目を瞑る。月の光が真上から差し込み、雪絵の整った顔を、そして豊満ながらもしっかり引き締まった見事な体を、煌々と照らす。


(綺麗だ……)

 オレは雪絵の肩を優しく抱き寄せつつ、口吻くちづけした。

 彼女は時折甘い吐息を漏らしつつ、次第に積極的に、オレの唇を貪る。オレも彼女の唇を、舌を、じっくりと探る。


「かような山奥の集落では、他所の殿方の血を必要としております。ましてや八郎様のような、秀でたる殿方の子種こだねを宿すことは、全てのおなごの望むところでございまする。さあ、遠慮は要りませぬ。わたくしに八郎様のお情けを……」


 雪絵は小さく喘ぎつつ、オレにせがむ。オレは雪絵の肩を抱いたまま、ゆっくりと湯に入り、月明かりの下で心ゆくまで睦み合った。

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