第10話 変わらない日常と、少しの変化

「私の事、思い出してくれた?」

「鏡の中から、出てこいよ・・・出来るんだろ?」

「うん、わかった・・・」

かえでは、鏡の中から出てきた。


食卓に行き、一緒に話す。


「冥くん、私の事思い出した?」

「ああ、思い出してはいないが、見当はついた?」

「何?」

僕は、話をした。

赤ちゃんの頃を・・・


「僕の両親は、いたずら好きで、生まれたばかりの僕に、鏡を見せた」

「うん」

「その反応を見せて、楽しんでいたようだ」

赤ちゃんに、鏡を見せるのは、とても危険だ。


「うん、正解だよ。冥くん」

「しかし、ある日僕は、鏡の中に閉じ込められた・・・

正しくは、引きこまれた」

そう、僕は覚えていないが、あの世に行ったらしい。


「うん、正解」

「その時に世話になったのが、かえで・・・なんだね・・・」

「正解だよ」


「あの頃は、まだ君が小さいので、大変だったな。

でも、なぜか私にだけは、なついてたんだ」

「うん」

「でも、まだ赤ちゃんは来ては行けないので、元の世界に返したんだ」

「感謝する。で、冥界にいったみたいなので、僕の名は、冥になった・・・」

「うん」

でも、かえでは何者だ?


「私は、人間だよ。但し、普通ではないけどね」

「普通ではない?」

「あの世とこの世を、行き来できる、ナビゲーターのような存在。

仕事はその案内人」

「そうか・・・」

「どの鏡も、霊界には繋がっていて、入ることが可能。

でも、鏡からこの世に行ける鏡は、限られている、それが君の部屋の鏡」

「僕の部屋の?」

「うん」

「じゃあ、偶然なんだね」

少し、がっかりしたが・・・


「偶然じゃないわ。私はずっと鏡の中から、君を見てた。

赤ちゃんの頃から・・・

そして、いつか助けてあげたくなったの・・・」

そっか・・・やはり、本心ではなかったか・・・


「本心だよ。私は君の彼女、間違いない」

「どうして?」

「君が、赤ちゃんの頃に約束したから・・・」

「でも、かえでは歳を取らないね、」

「私の半分は、霊界で生活しているからね。歳の取り方は遅いんだ。」

「でも、どうしてその仕事を?」

「先祖代々では、だめかな?」

「いいよ、それで・・・」


かえでの仕事場は鏡の中だが、僕の家の鏡からなら、出入りできる。

僕の行動を先回り出来たり、行動を読めたのもそのためか・・・


「でも、私は冥くんとは、結婚できない・・・」

「でも、彼女にはなってくれるんだろ?」

「いいの?」

「うん」

「後悔しない?」

「ああ」

迷いはなかった。


「ありがとう。冥くん・・・」


次の日から、いつも通りの生活になる。


僕は朝起きたら、朝食とお弁当が用意してある。

メモ書きで、文通?をする。


昼ごはんは、僕がかえでのために用意する。

帰宅すると、奇麗に片付いていて、晩飯が用意されている。


かえでのために夜食をつくり、翌朝には、片づけられていてメモ書きがある。


ただ、一つ変わった事は・・・


「冥くん、出かけるよ」

「今行く」

「今日は、どこへ連れて行ってくれるの?」

「プラネタリウム」

「らしいね。じゃあ行こう」


毎週の最終日曜日にだけ、こうしてデートする事が許された。

今は、それを楽しんでいる。


結婚は無理、でも、こうしてそばにいてくれるだけでも、僕は嬉しかった。


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やっと会えたね 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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