第6話  隠された真実

「菅野くん、手紙見せてくれる?」

メモ書きの事だろう・・・

心配して尋ねて来てくれた、同僚の女の子に見せてみた。


「うん、確かに女の子の筆跡だね。お弁当見せてくれる?」

今更、どうなるってものでもあるまい。

見せてみた。


「菅野くん、もしかしたら、あなたはからかわれてると思ってるかもしれないけど・・・」

「違うの?」

「それは、絶対にないわ。よく見て」

お弁当を見ていみる。


特に変わったところはないが・・・


「わからない?」

「うん」

「じゃあ、教えてあげるわ。このお弁当は、栄養のバランスがちゃんと考えてられてあるわ。

それに、冷凍食品がひとつもない。全て、この子の手作り。

からかってるだけなら、ここまではしないわ」

「でも、誰かを雇えば・・・」

「違う。あなたが思ってるほど、悪い子ばかりじゃない」


でも・・・


「じゃあ、試してみようか?」

「何を?」

「これまでのメモ書き、全て見せてくれる?」

「ああ」

何かの時の証拠のために、全て残しておいた。



「この子、あなたの事を、本当に心配している」

「なぜ、わかるの?」

「まず食生活。毎食栄養バランスが考えているし、同じような料理は続かない。

野菜が多くて、油ものはとても少ない」


「わからないなら、試してみようか?」

「何を・・・」

「晩御飯までに、外へ出てるの。

もちろんみんなで・・・」

何をたくらんでるのかわからないが・・・


もう、ついでだ・・・


晩御飯まで外で時間をつぶした。

社員全員で・・・

社員には犯人はいないという証拠のために・・・


そして、晩御飯の時間になると帰宅する。

提案してくれた同僚の女の子とふたりだけで来た。


いつものように、晩御飯は既に用意されている。

「いつも、こんな感じなんだよね?」

「うん・・・」

「この子は、あなたの事を、真剣に気遣っている。

これは明らかに、手料理。出前もお惣菜もない。

この子が、心をこめて、あなたのためだけに作った料理」

なぜわかるんだ?


メモ書きがある。


【冥くん


お帰り。

少し悲しいな・・・

私の事を、疑っていたなんて・・・


でも、これで信じてくれた?

私は、君を苦しめた人たちとは違うってこと・・・


それから、冥くんのそばにいる同僚の女の子さん、

ありがとう。

でももう、平気。


後は、私ががんばるから。


冥くん、これからも、よろしくね。


かえで】


同僚の女の子は、もう大丈夫ねといい、帰宅した。


僕は立ちつくした。


かえで・・・君は何者なんだ?



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