第5話  優しさと真実と

しばらくすると、会社の同僚や後輩、上司が何人か来てくれた。

心配して来てくれたようだ。


僕はにわかには信じがたい、これまでの話を全て話した。

「たしかに君が悪いな」

「ああ、見張っていよう」

そういって、付き合ってくれた。


ありがたい・・・


ちなみにこれまでの手紙の文字は、同じ筆跡。

筆跡鑑定もしてもらったので、別人ではなく、同一犯。


わからない・・・

どう考えても・・・


もしかして、どっきりか?

誰かがからかっているのか?

いや、むしろそのほうがありがたい。

すっきりする。


「ねえ、本当にこの、佐倉かえでさんだっけ?覚えはないの?」

同僚の女性に訊かれる。

「ああ、全くない」

「同級生とかは?」

「学生時代の名簿、アルバム、全て見たが、ひとりもいなかった。」

「苗字がかわっているとか?」

「そのせんも考えたが、かえでという名前の子はひとりもいない。

もちろん楓とかもいなかった。男女共に・・・教職員も含めて・・・」


不思議というか、全くおかしい・・・


小学生時代に、偽の女の子でからかってもてあそばれて傷ついてトラウマになっている。

その事が、頭をよぎった。

もしまたそうなら、今度こそ、警察に突き出してやる、


昼になり、みんなお腹が減る。

それぞれ、お弁当を用意していた。


僕も、失礼していただく事にした。

かえでが用意してくれていた、お弁当を広げる。


あれ?またメモ


【冥くん


今日は家にいるね。

会社の人たちが家に来てるでしょ?


もしかしたら、私を誰かが作り上げた架空の女の子と疑ってない?

安心して、私は存在するわ。


君を痛めつけてきた、あの子たちとは違う。


それと冷蔵庫に、おかずつくっておいたから、

会社の人たちにも食べさせてあげて・・・


じゃあ、がんばって


かえで】


なぜ知っている?

僕の忌わしい過去を・・・

やはり関係者か・・・


そうだな・・・

そうに違いない・・・


すっきりした・・・

でも、悲しくなった・・・


神様、あんたは意地悪だ。


でも、誰だ?

犯人は?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る