第9話 わたしたち夫婦について part 2 「自由を謳歌する妻」


今回は、トランスジェンダー (MTF)とカミングアウトするずっと以前の、パートナーとわたしの新婚時代の頃について。



付き合った当初から 「かかあ天下」。優しくておっとりした彼を、完全に尻にしいていました。彼の優しさに甘え切って、好きなことを好きなようにさせてもらっていました。優柔不断なところがある彼は、私の決断力とか押しの強さに、惹かれていたと思います。少なくとも、子供ができるまでは 。



私は大学卒業後、日系の出版社で営業や編集の仕事をしていましたが、結婚して永住権が取れたので、出版社での仕事を辞め、好きなことにチャレンジすることにしました。



料理が大好きだったの、当時、ベニスビーチに開校したばかりの寿司職人養成学校に通い、夜は和食のレストランのキッチンで調理の仕事をしました。



帰りが夜中を過ぎ、週末出勤も多かったのに、彼は文句ひとつ言わず、応援してくれました。今振り返ると、彼の優しさと弱さにつけ込んで、わたしは自由を謳歌し、自分のやりたいことに突っ走っていた気がします。職場の日本人男性たちからは「自分だったら、嫁にそんな好き勝手なこと絶対させない」と言われていました。



彼はアメリカ最大規模の商業不動産の会社でコンピューター管理をする仕事に携わり、午前8時から午後6時までの定時の仕事をしていました。



時間的にすれ違うことが多くなりましたが、一緒に過ごせる時間を大切にし、愛情溢れる夫婦生活を送っていたと私は思います。自分のやりたいことが山ほどあったし、ふたりの時間を楽しみたかったので、子供がほしいとは思いませんでした。



夢に描いていたような理想の結婚生活でした。彼は私の好きなことを好きなようにさせてくれたし、仕事の休みの日は海、山、ハイキング、ワイナリー巡り、など南カリフォルニアならではの生活を満喫しました。


次回は順風満帆と思われた結婚生活に、不気味な影が?彼の浪費癖について書きます

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