第4話

 で?証拠は集まってきてるの?


 そう、いい感じじゃない。ぎゃふんと言わせてやりたいわね、そのクソ上司。


 私が初めてそのセクハラの話を聞いたのは、半年くらい前だったかしら。それから今日までの間にこんなに証拠が集まるとはねぇ。


 あの子は大丈夫なの?進退は・・・ああ、やっぱり退職を考え直す気はないのね。残念だけど、それなら集めた証拠を思い切りクソ上司に叩きつけてやれるわね。その場面を想像したら私は当事者じゃないけどワクワクしちゃう。


 慌てるクソ上司、クソ上司を冷ややかな目で見る社員たち、クソ上司を待つこれからの人生・・・ぐふふふふ・・・あらやだ、ごめんない、勝手に盛り上がっちゃった。


 で、あんたの方は大丈夫なの?仕事に支障が出たり、これからの立場が危うくなったり・・・そう、人事部の人が。その人は味方なのね、心強いじゃない。強力な助っ人だわね。その人と協力しながらクソ上司と対決か。見ものね。


 でもどうして彼女が辞めなきゃいけないのかしら。被害者なのにねぇ。


 この被害者が蔑ろにされる風潮はどうにかならないものかしら。会社の中だけじゃなく、社会全体がこんな感じよね。やりきれないわよ、まったく。


  でもそんな世の中で、あんたみたいな人間に出会えた彼女は幸運よ。悪い人間ばかりじゃないってことを、あんたを見たらきっと思えるんだからさ。彼女に対して恋愛感情とかそういうものはないんでしょ?それなら尚更すごいわよね、あんた神様?


 ふむ、同じ男として許せないのか。同性からも異性からも疎まれる存在のクソ上司ってどうしようもないわね。彼女が会社を去るならクソ上司は地球から去ってほしいもんだわね。


 会社でのゴタゴタが済んだらさ、彼女を連れてここに来なさいよ。はぁ?お別れ会なんかやるわけないじゃない。壮行会よ、壮行会!彼女とあんたの未来に乾杯したいのよ。力強く生きている若者をあたしは見送りたいの。


 彼女の新たな門出には相応しくないような店だけどさ、応援する気持ちはどこの誰にも負けないよ。だからいらっしゃいよ、権力に立ち向かって戦った勇気あるあんたたちを私に労わせておくれよ。ね?待ってるよ。


 

 

 


 

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