第5話

 疲れ切ってるわね、あんた。どこ行ってきたのよ?


 薄い本を・・・ああ、コミケ?また行ってきたのね。くたくたな割には目がギラギラしてて怖いわよ。


 このために生きてるってかぁ、良いわね。夢中になれることがあるって素敵なことよ。


 もう二次元しか愛せない?現実の男はコリゴリねぇ・・・そういう風に言う男女って最近多いわよね。でも二次元のキャラクターを好きになっても相手は画面や紙の中からは出てこないわけでしょ?キスもしてくれなければ結婚もしてくれないのに夢中になってどうすんの?


 推し同士が絡み合って幸せそうにしているのを見ることが私の幸せってさぁ、あんた自身の幸せはどこ行ったのよ。そもそも、推しと推しが絡み合って愛し合ってるのはわかるんだけど、あんたはどの立ち位置からその薄い本を見てるわけ?


 押し倒す方?押し倒される方?


 自分は愛を育んでいる二人を見守るだけの存在・・・それは母親的存在ってこと?違うの?

 

 どうしよう、私よくわからないわ。なんていうか、イケメン同士がイチャイチャラブラブしている姿を延々と見ているだけで、どちらかに感情移入をしてどうこうってわけではないってことなのかしら。


 う~ん、やっぱりよくわかんないわ。でもまぁ、あんたがそれで幸せなら何も言うことはないんだけど・・・。最近リアルな男性からのお誘いはないの?


 あら!あるんじゃない。その人と飲みに行ってきなさいよ。興味がない人だっていいじゃない。いろいろ話しているうちに仲良くなれちゃうかもよ?


 薄い本を読まなきゃってさ、本は置いていても逃げないわよ。でも人はいなくなるの。相手からの好意もずっと続くわけじゃないんだから。せっかくのご縁じゃない、気軽な気持ちで行ってきなさいな。


 そうよ、一つだけの世界で生き続けるなんてもったいないわよ。二次元と三次元を二つとも楽しんで生きればいいじゃない。一粒で二度おいしいってやつね・・・あれ?なんか違うか?でもなんとなくわかるでしょ?私の言いたいこと。


 え?相手をBL系の妄想のネタとして使うために会う?


 いくら興味がないからって、あんたさぁ・・・。でもまぁそれでもいいから、とにかく行ってきなさいよ。


 二次元にハマれたこともご縁、彼からのお誘いもご縁、縁は自然に結ばれるものではないわ。自分から進んで結びにいかないとなかなか結ばれないものよ。


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る