第2話

 いらっしゃい・・・なによ、暗い顔しちゃってさぁ。


 最近虐待のニュースが多くて辛い・・・かぁ。


 まぁまぁ、とりあえず座んなさいな。なに飲む?ビールでいい?暗い気分をシュワシュワで吹き飛ばしちゃいなさいよ。はい、どうぞ!


 そう言えば、あなたまだ小さいお嬢さんがいたわよね?そりゃニュース見るたびに精神的ダメージは大きくなるかもね。でも虐待って最近増え出したものではないと思うのよ。昔からあったものが注目されるようになって、告発される機会が増えただけなのよね。


 うん、確かに信じられないわよね、我が子を殺めるなんて。どんな事情があってそんなことになるんだか。


 虐待する親としない親の違いねぇ・・・。私、親になったことがないからわからないけど、強いか強くないかの違いじゃないかしら。拳の力ではなく、精神的な面のことね。虐待って、我が子を守れるほどの強さを持たないうちに弱い者を守るべき立場になってしまった結果の悲劇とでもいうのかしら・・・。弱くて未熟な大人の末路って感じがするわね。


 どこかで聞いた話だけど、虐待する大人は『元虐待被害者』っていう説があるわよね。愛されて育ってこなかった大人が我が子との接し方がわからず、自分がされてきたことを知らず知らずのうちに子供にもしてしまうという負の連鎖説とかも聞いたことがあるわ。まぁ、親側にどんな理由があろうと虐待をしてもいい理由にはならないんだけど。


 あなたが言うように、子どもが生まれたからと言って、みんながみんな強くなれるわけではないのよ。根本が弱い大人だと、本能が許さないんじゃないかしら。どれだけ弱さを奥に隠していても隠し切れなくて、弱さを誰かにぶつけないと自分を保っていられなくなるのよ、きっと。


 そして弱さをぶつける矛先はいつも自分より弱くて、自分しか頼れる人間がいない子どもに向けられるのよね。卑怯で卑劣なこと!


 いつかいろんなことが今より発展して、人間も進化していけるなら、子どもが親を選べる時代が来るといいわね。その時はみんなあなたみたいな大人を選んで生まれて幸せになれるはずよ、必ずね・・・。



 なんだかしんみりしちゃったわね。今日は私も飲んじゃおうかな。キャンティ、あんたも飲みなさいよ。一杯だけなら私がおごってあげるからさ。


 では改めて、乾杯!!


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