第55話水の回廊~フェアリィハミング・後編(ステンレス銀河叙情詩編)
「サダコちゃん!」
「いいかい雪の女!」
「ナパームとグレネードをセットで使うんだ」
「ナパーム弾を投げて火事場を作ってから爆弾で片付ける」
「電子グレネードは、電子製品にこそ威力を発揮するんだ」
「あんたも機械だから、巻き込まれるなよ!!」
「はい!」
チュチュン・・・チュチュ
バウン!
ドカッ・・・バラバラバラ
真昼の昼下がり。
今あたくし達はの瓦礫のホワイトワンシティで、機械化師団の機械兵器たちと交戦中ですわ。
さっき出会った宇宙人の女の子、サダコ・タイタンとトモに戦う。
でもこの子は・・・
レーザーパルスライフルで目の前に迫る機械の群れを威嚇射撃。
機械兵器には弱点がある。
電磁シールドに守られていても、レーザー攻撃の圧力で一瞬シールドが無効化する。
回復前にもう一射を加えるのですが。ドコを撃てば良いのか。
硬い装甲でなく、関節パーツ。宇宙人で言う膝や肘、首などの箇所は、その構造故にもろく造られている。
これをガードする装甲も、叩き壊せば良いのです。
ただこの時代のパルスライフルは、えらくクセが強くて戦力も弱い。
「!」
サダコちゃんが機械たち相手に戦うのを援護する。
後ろにある郵便ポスト、白いガレキの中で奇跡的に原型を留めている。真っ赤なペイントが派手に見えるわ。
バビュン!
「ステン!」
「解るね?」
「ツインレールガンだから一撃で二連の光帯が発射される」
「それが三連射出来る、ゲイン再チャージに掛かる時間は」
「三秒だ!!」
「狙う時間よりも破壊する事に努めろ!!」
「こいつらは地上部隊だけだ、戦車が後方で支援しているから」
「レールガンの特性でブッ壊せ!」
「セオリー通りに驚異から排除せよ!!」
あたくしは無言でクソ重いレールガンを取り出して準備する。
もう着用している水着が酷く汚れている。
まっ白い腕と足も黒く煤けている。
無反動二重レール砲。
この火器は上下に二つ砲門があります。
「これ?」
ヒュ・・ポチッ
レーザーポインタスコープが飛び出した。
「使えるわ!!」
バカン!
白い壁のガレキがブッ飛んだ。
火線ラインはオールクリア。
後方に居るあたくしから見えていなかった敵勢力が全て狙える。
さっからレーザー攻撃に被弾しているが、Eフィールドに守られている。
「早く撃て!」
「あんたが狙われてるぞ!」
彼女がライフルを構えながら振り向く。
「!」
キン
黄色い二つの光がまっすぐ線を描き一直線に戦車に突き刺さる。
キンキン
ズドドドーーンッ!!
「次の車両は何処?」
三連射の後のチャージは既に終わった。ゲイン残留音が耳障り?
「いえ、気持ちが良い音ですわ!」
「その向こうだ!」
「遠すぎて良く見えないが、ステンの能力なら出来る筈だぞ!」
バチンッ
「サダコちゃん!!」
なんてこと・・・サダコちゃんが、その戦車のレーザー砲を喰らった。パルスライフルが飛んで彼女は後ろへ吹っ飛んだ。
バビュン!
レールガンを片手に持ったまま前方へ駆け出す。
敵の兵力は未だ健在ですが、かなり削ったわ。時間が勝負。
「ふん!」
ナパームを全部投げた、紅蓮の炎が一面を赤く燃やす。次は電子グレネード。
ピンピンピン!
安全ピンを抜いて三発全部同時に遠投。
「ふんぬっ!」
BOMB!!
「何なのこの破壊力は?」
敵のレーザー帯群が頭上を飛び交う中で、彼女の体を抱き上げる。
右手の指が数本失くなっている。
胴体からも出血しているわ、早く止血しないと!
無理やり上着を脱がせる。
「!」
「サダコちゃん、これは何!?」
「・・・・」
手術の跡の縫い傷が何本も体を這っている。太いの細いの。
真っ白なスポーツブラジャーの中身を見る勇気がない。
可愛く膨らんだ胸は、綺麗じゃなきゃいけないのに。
「こんな傷、この時代の医療でも簡単に消せるのに!」
「もう私の帰る処はないんだ」
「今は海の底だぞ」
「サダコちゃん」
あたくしの落とす涙にこの子の顔が濡れてゆく。
「M-3爆薬だ、宇宙人が造った技術をあいつらは使った」
「大陸を沈めた」
「地殻に爆薬を挿してマントル対流をねじ曲げたんだ」
「・・・・」
「まだ数ヶ月前だ、いつもの様に午前の授業中だった」
「教室に居る全員が異常に気がついた」
「警報のサイレンが始まる前から爆撃が始まったんだ」
「高度一万メートルからの爆撃機の絨毯爆撃」
「いきなり爆弾が落下してくる金切り音が聞こえた」
「逃げる暇がなかったんだ」
「・・・・」
もうあたくしにはこの場の事よりも、この子の傷を癒す事しか頭にない。
「全てが終わって、瓦礫の中から生きて出られた私は知った」
「学校も家族も、みんな死んだんだ」
「・・・・」
「一人だけ生き延びて、いったい何処へ逃げるの」
機械部隊が前進してくる。残存兵力は既に弱体化しているわ。
でも、機械を破壊するよりもこの子を連れて逃げるです!
「逃げるのよサダコちゃん」
「あなた達を守る為にあたくし達は造られたのですわ!」
うわ、一両生き残った戦車がレーザー照射でポイントしている。
「!」
ブン
バッカーン!
彼女を抱き抱えて左横にあるビルの陰に飛ぶ。
もう武装を捨ててもこの子を守るですわ!
じりじりと残存している機械達が近寄ってくる。
隠れているビルを破壊し始めた。白いコンクリが砕け散っていく。
「駄目です!」「サダコちゃん!」「東へ向かって走るわよ!」
「ステン・・・」
二人で走り出す。細い路地は暗くて、遠くに明るい場所がある。
もう敵の攻撃は届かない。一秒でも速く走れ。
「明日へ向かって走れ!サダコ!!」
サダコちゃんが息切れをしながら走る。あたくしは平気で走る。
随分走った。やっと明るい広場へ出た。
白い人工床の広場は・・・
「公園?」
高台にある公園は奇跡的に原型を留めている。
各所に設けられた水道口からは噴水は出ていない。
白色で統一された都市公園は、まるで空虚な佇まい。
「無?」
彼女が膝を屈折して膝小僧に両手を載せて、息切れと疲労を回復中。
「あれ?」
西からすごい速度で熱源が来る。鳥さん?・・・大き過ぎる。
飛行機だ。ステルスを解除してワザと知らせているのです。
この機体データは・・・
キィィィィン
「コンバットフライッ!!」
ズドン!!
半壊したビル群の上、走って来た細い路地のちょうど真上。
超低空飛行であたくしたちの目の前の頭上に飛び出して来た。
ビリビリビリ・・・
場が叫んで凄い旋風が発生した。あたくしの長い白髪が爆発しました。
「ゆ、雪女だあぁ!!」
サダコちゃんが叫ぶ。
「なんやそれ?」
旋回して五式戦が戻ってきた。
あのカラーリングは・・・やっぱり。
「ブルーさん、何で此処に来れるの?」
垂直着陸してきたパイロットは、顔を見るなり苦情を言いだした。
「まったく、あんたは自分勝手過ぎるのよ」
「だいたい、何であたしがこんな異次元にまで来るのよ」
「何で五式戦が時間跳躍出来るの?」
「信じられない、ありえないわ!」
ブルーさんは憎まれ口をほざきながら、サダコちゃんを乗せて医療が受けられる処まで飛んでいった。
五式は単座だから、あたくしまで乗せる事が出来無い。
「あたくしも帰らないと」
でも帰るには・・・北の方で何かが待っている気がするのです。
北の待ち人は・・・ブラックホールの様に物質と精神を吸い込むのですが。
それは全てを元通りに治す役目、ケア存在。
絡み合う糸は、解かれる為にもみくちゃにされる。
綺麗事では済まされない世界が此処にはあるのですわ。
いま記憶クリスタルチップを振り返ります。
サダコ・タイタンとの別れ。
止血はしてあるが、すぐに治療が必要です。
白い公園には木々が植樹してありますが、朽ち果てている。
都市の高層ビル群の隙間にある空中公園。
その中央広場、円形の踊り場の段差は、短い階段が寂しそう。
彼女と対面して直立、何と言えば良いのでしょう。
後ろでブルーさんが機体をウエスで磨いてます。
「サダコちゃん、お世話に成りました」
「ああ、お世話したぞ、ステン」
激痛で耐えられない筈なのにこの子は、笑顔であたくしを励まそうとする。
彼女の左手と握手。
彼女はニカッと笑う・・・虫歯があります。
「ノリミィ・・・」
「・・・誰を見ているのだステン」
「私はサダコだぞ」
ふわ
サダコちゃんを頭の上から抱きしめる。
この子をこの世から隠してしまいたい。
ノリミィ・タイタンの幻覚が見えるなんて・・・
さっきからあたくし達を見つめている空は、青空ですわ。
巡洋艦「デンライ」の艦橋で戦闘ブリッジから海を見ながら。
ウリュ・ミタラシ副長がつぶやく。
「ステンねーさま」
「お土産が、ブヒブヒまんじゅう一個って」
「これは何処でも売ってますよ?」
「どの銀河系でも売ってるから、お土産には向いてませんよお?」
「ウリュさん、それを言ってはおしまいですわ」
「イチゴ操舵手、あなたには苺まんじゅうです」
「艦長、ブルー大尉が軍港まで飛んで行きました」
「苺まんじゅうて、あたしがイチゴだからですか?」
「イチゴちゃんてキュート過ぎるわね」
「少女趣味の男に狙われるわよ?」
「ふっふ~んだ」
「あたしのアッパーはイチゴカットよ!」
「艦長命令」
「イチゴちゃん、後ろを見ながら操舵しないで下さい」
「苺まんじゅうは逃げないから、食堂の冷蔵庫へ入れておきますわ」
「全乗組員に告ぐ」
「本艦は訓練課程を繰り上げ、最短距離の海上軍港へ寄港」
「宇宙ドックまでの旅を満喫してください」
「宇宙巡洋艦バージが待ってるわよ!」
海軍らしく水兵のセーラー服を着るが、皆子供にしか見えないのは気のせいかしら?
コードLP ノーリターン新 @senkuno
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