第53話宇宙人タイタンの手記(ステンレス銀河叙情詩編)
シュィン・・・
「・・・・」
私の住所の近くに彼の住処があって助かる。
仕事用に購入したマイエアカーで向かう、エアプレーンじゃないの?
ついでにカネ出してエア運転免許も取得したけど。
お得なパックで化石カー種も取った。
だけど化石カーの売値が高すぎて・・・安いエアカー大衆車を購入。
マニュアル操縦に優れているハイグレード選択。
でも何かこれ。管理エーアイがうるさくて運転に集中出来ない。
だっていちいち私の運転のケチつけるのよこの管理エーアイは。
もっと大人しいお嬢様タイプの「ナデシコ桜」チップを買うつもり。
えとね、現代ではエアカーは化石以外は、免許が無くても乗れるの。
金さえ払えば車体登録と保険と税金だけで走れる。
走ってなくて浮かんでるし、座ってるだけ。運転させてくれない。
宇宙人が信用されなくなったの。機械の方が真面目という理由。
だから自分で運転したければ教習所で運転免許を取るのね。
それでも管理エーアイ搭載義務のエアカーは制限が大きい。
化石カーは高額で免許所得も難しいから、私ら運転マニアには高嶺の花。
「ノリミィさん」
「なんですか」
「そこのコーナーはもっと手前で減速するべきです」
「もう曲がったんだからいいでしょ」
「いまギアをマニュアルに変更しますから」
「それとあなたの音声を蚊の鳴くような音量に変えます」
「ノリミィさん」
「なんですか」
「それは不可能です」
「・・・・」
そうこうしているうち目的地のあたりに来たわ。
ホントにこのエーアイはムカつくんだから。
区画整理が行き届いた27番街。住宅が並ぶ新興住宅タウン。
白い色のハウスが立ち並ぶ。道路も白いけど地面は見ないからね。
空が黄色い、砂塵なの?
夕焼けが黄色いのね。公道に砂が混じっている。
化石カーならすっ飛ぶわね。道路管理会社に報告する義務がある
な。
「アマンダさん」
「道路管理会社にここの公道の現状を報告命令」
「直ぐにやりなさい」
「分かりました」
「ここだ」
「ナビさんの言うとおり」
駐車スペースがないから、アマンダに遠くの有料Pへ行かせる。
脳波で呼べば来るなんて、ど~なってんの?
昼なのに、いや夕刻でも無人だ。ゴーストタウン?
・・・庭に女が居る。若い女が楽しそうに化石ホウキで庭掃除。てか歌ってるし踊ってないか?
主婦なのか家政婦なのか、ど~みても雇われてるな。
エプロンが地味すぎるし。
玄関の外から話し掛ける。インターホンもチャイムもない。
鍵くらいつけてないのか?
鉄の扉が風で揺れているが、こっちに気がつかないのかこの女は?
「あのう・・・お電話したノリミィ・タイタンですが」
「ルンルンルン♪」
「あのう・・・」
「ミタラシ教授の御宅ですよね」
「は!」
「はいはい、伺っておりますよ」
「ささ、ど~ぞ中へおいでなすって」
「ぷっ!」
「私は産まれも育ってはいませんがここのマザーベース産まれの」
「ロボメイドですのよ」
「あ、タイちゃんの仕事は教授のインタビューでしたね」
「た、タイちゃん?」
ハウス内へ案内される間にこの女はマシンガンのように喋る。
後ろに目があるのか?私の仕草を観て探偵気分で推理をしだした。
「タイ様は運転歴が永いようですね、周囲の確認を怠ってません」
「タイ様?」
「ご乗車くださいました愛車はいずこへ?」
「ぷぷっ!」
ガチャ・・キュゥ
「ミタラシ教授、のりちゃんが来ました」
「例のセクシィジャーナリストですわよ!」
「うひひひ!」
「噂通りの男を狂わせる能力者ですわ、餌食にならないでね」
こ、この女、ネジが緩みすぎてるぞ。
擬人にもこんな重力を無視した女が居るのか・・・
「お待ちしてました、ミス・タイタン」
「メイドの非常識な発言をお許し下さい」
「いえ、面白いご婦人です」
「溜まってるんですよ」
「はへ?」
「活躍したいんですよ、彼女も」
「そのために造られたんですから」
「教授、聞いてますわよ」
「いいんですよ、ウリュさん」
「私と夫婦生活するよりも宇宙英雄たちと駆けて来なさい」
ミタラシ教授は白い白衣を着てるが、この女も白いエプロン。
は、裸に?
いや、ホットパンツにブラ・・・ぶらじゃあ!?
「あの、そのピンクのブラは水着ですか?」
「ありゃ・・・ごめんなさい」「着替えてきます!」
バビュン!
「・・・・・」
「ははは」「許してやってください」
「あ~いう娘なんですよ」
「お察しします」
私はやっと仕事ができた。彼の持論の学説を黙って聴き続ける。
擬人の謎の部分をかなり聴くことが出来た。
秘密になってる部分が多すぎるのだ。
当然、守秘義務。関係者が秘密にするには訳があって、まだ安全でないから。邪な存在が狙っている。
人を守るために製造される擬人は、闇側から見れば脅威。
前回の大規模な反攻作戦で、闇の隠れていた勢力が一転して攻勢に転じた。
踏んでいたのだ、このタイミングを。
「わかりますかミス・タイタン」
「宇宙人にとって擬人は良きパートナーなんです」
「その中でも優秀なLPシリーズは、歴史の中で我々生命体に貢献してきました」
「はい、認知されています」
「例えば、宇宙人の魂にあたるクリスタルソウルは」
「その存在は知られていますが、どんなものか殆どが秘密です」
「当人の擬人たちも知りません」
「そ~なんですか」
「いえ、記憶が封印されているんですよ」
「何ですそれは」
「人間と同じです」
「知っているのに思い出せないんですよ」
「それが平等であるからです」
「・・・・・」
「自宅へ帰って報告記事を書くのが楽しみです」
「ミタラシ教授」
約2時間ほどインタビューに費やした後、帰った。
別れの挨拶。
ミタラシ家の玄関で立ち話。教授は居なくてあの女と。
「お世話になりました」
「これはブラじゃないよね」
「ええ、そ~ですね」
「ノーブラで白いTシャツの方がいやらしいですよ?ウリュさん」
「!」
「乳首がわかるの?」「エスパー?」
「では」
「ちょびっとお待ちになって学術マニアのお嬢さん」
「ぷっ!」
「また宇宙の戦地で会えますね、コンバットカメラマン」
「きゃはははは!」
「なに?あなたもあの作戦で傭兵するの?」
「ええ、そ~です」
「のりちゃんが好きなステンレスお姉さまの部下ですよ!」
「あはははは!」
出会いとは面白いもの、自分から行動しなければ点と点は線で繋がらない。
弾かれ惹かれあう魂は、面白い宇宙の魔法みたいだ。
帰りのエアカードライビングも、アマンダとコンバット。
「アマンダさん」
「はい」
「最近痩せたわね」
「・・・・」
「ノリミィさん」
「はい」
「エーアイにもイヤミは理解できます」
「はい」
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