第50話私はPちゃん・前編

「・・・・・」


うーん・・・この電読みカレンダーはフザケてんのかな?

今の暦がニュー歴0202年て、何それ?

ケイト殿が変なコト言ってたな。

お乳でこよみを刻む?母乳が出るの?


確か私が製造されたのは、チーズ歴?

いえいえ違うわね。

確か・・・南部歴だったよ。

南部歴0399年?私の脳回路に刻まれてるから。エラー?

あ、そうか。ケイト殿は違う星系の出身だから。

暦がまるで違いますにゃん。

あのオナゴはヤシャ星系ですにゃ。

ここはファーム星系で、ヤシャよりは田舎なのかなあ。

Pちゃん都会星系へ行ってみたいの。


「・・・もう寝ようかなあ」


私は寝る癖がある。

擬人は寝なくても平気なんだけど、私は寝たいの。

擬人も夢を見れるのに気がついたのは、何世紀前かにゃあ?


今はラインハルトは前線基地に居るけど。

みんな暇そうね。でも遊びにも行けないみたい。

夜だから静か、て言うかみんな何してんのかしら。

床で忠犬3型が寝てるぞ。て言うか活動停止してるの。


「便利なワン公だわ」


もう14時か、14時って何で14時て言うのかな。

夜中は0時なのに14時とも言うから紛らわしいじゃん。

午前1時は15時て言わないもんな。日付変更ライン?



「うーん、寝よう」


ゴソゴソ・・・


ベッドのお布団に潜ってぬくぬくにゃん。


「・・・・・・」


何かどうでも良くなってくる。

いい加減で無責任な気持ちがやって来たにゃ。

何にも気にしなくなれば寝れるのねん。


「・・・・・・」


擬人も年を取るのかな?


「私は何歳なんだろうか?」


永く生き過ぎて解んなくなってるわ。脳回路にカウントされる筈なんだけど。エラーになってるにゃん。

うん、少なくとも7世紀くらい生きたな。


「涙って何でいつまでも失くならないんだろう?」


何百年も泣き続けると海が出来るって本当みたいね。

だから海は塩辛いのかなあ?

うん?逆なのかにゃ。


「・・・・・・・」


がば!


バキバキッバキ!!


ブウン・・・


「Pさま、今のは痛すぎだワン!」


「ワンちゃん、眠れないから子守唄を歌ってあげるね」


「はっ!・・・僕は停止して居たのでは?」


「いいのよ無理しなくても」

「さあ、赤ちゃん防衛ラブソング。音楽スタートにゃん!」

「ララララア・・・♪」


「わん!睡眠と活動停止は意味が違うワン!」





「・・・・・・」


あれ、ここは何処?

ここは確か・・・あんまりにも昔過ぎて良く思い出せない。

あ、そうか世界初の擬人の完成披露の最中だ。

私の兵器としての、さらし者パーティが始まるわ。

後頭部と背中に無数の配線とチューブが繋がってる。

まだ出来てないじゃん。


パチパチパチ・・・


「ほお、これがあの噂の大量殺戮オンナですか」

「ただのガキにしか見えませんが?」


「洋服ぐらい着せないと・・・ムラムラしてくる」

「生殖機能もあるんですか?」


「はい、繁殖は出来ませんが、性行為は出来ます」

「セクサロイドとしても稼げますね」


何こいてんだコイツラ。

あちゃ~。Pちゃん全裸で、綺麗なカラダが可哀想にゃん。

あん?じゃあ今この私は何処に居るの?


「起動します」

「スタンバイして」


「はい」


バチン!


ヒュウゥゥ・・ン


ブゥ・・ン



「おお、起きたぞ!」


「眼が赤いな、好き者ウサギかこのガキは?」


「違います、戦闘モードです」

「普段は黒い瞳です、凶暴性はありません」

「敵勢勢力だけに攻撃をしますから」

「少女体型ですが、強姦魔すら瞬殺できます」


「恐ろしいおもちゃを造ったものですな、軍本部は」


「いえ、設計製造全てを技研が極秘で開発しました」

「軍が命令と予算を出しますが」

「開発元の科学研究所は何か企んでいるようです」

「データが改ざんされている可能性がありますから」


「おいおい大丈夫かね?」

「なんなら、風俗街で働かせる方がこのガキには幸せでは?」


「それは困ります」

「莫大な国家予算が、すけべな客の性欲処理にされては」


「わっはははは!」


コイツラ殺したい、今すぐに。

でもこの時点では、私には正しい感情がない。マシーンだ。

大切なことが全てロックされている。


「そう、全ては愛のために」

「愛を忘れたこの絶望の世界では・・・」

「守らなければ」


マザーヒメギミは、マザーコンピュータは軍司令部に居る。

でもそれは本来ではないの。

本当なら技研の研究施設に居なきゃいけないのに。

最高の頭脳と知性と感性が、暴力主義者たちに利用される。

いや、悪用ね。


愛は弱い。

物質の世界では、見えるチカラを使う存在の天下。

でもそれは愛の約束を忘れているから。


「全てマザーから聴いたことよ」

「愛は死なない」

「永遠にね」


「マザーヒメギミ・・・」

「あなたは愛の為に人が生きる世界を信じている」


7世紀も生きた今だから判るわ、Pちゃんである私は。

そして今も何処かで生きている、ヒメギミは。

私達は繋がっているから、愛でね。



にゃあ?


ここは・・・


「そうにゃ!ペインとの愛の巣にゃのだ!」


ペインとの逃避行中に、お金が無いから現地で働いたのね。

共働きってヤツよ。夫婦はそ~するんだってさ。

Pちゃんは彼が教えた通りに技術工のエンジニアで稼いだ。

会社の人達がびっくらこいてた。

私が色んな機械製品を修理するから技術を教えてくれと言うの。

ペインは肉体労働でたくましい身体に、よだれが止まらん!


2人で安いアパートに暮らした。わずか数ヶ月だったが。

信じられない幸せだったわ。

忘れられない愛欲の日々でした。

今でも想い出すとボディが疼くにゃ。

擬人も自慰行為はするのね、全員じゃないけど。



にゃあ?


ここは、ペインと婚前旅行に行ったホテルの庭園の岸壁ね。

彼の愛のお話は今も覚えてる、濡れまくるの。

男と女って、結ばれる事が出来るイケてるシステムだわ。


岸に並んで立つ2人。

海の向こうから閃光が光速で走ってくる。

朝日の光が強すぎて目が眩むぅ・・・

御来光(ごらいこう)だわ!・・・うにゃあああ。



前編終了

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