第47話乙女生命体パワー

「うーん・・・」

「うん?」

「あ、あれかな?」


あたしはケイト。

この前あたしの変な宇宙病を大手術で治してもらって。

それが原因でこの宇宙次元は変わったのね。

何だか分からないんだけどマザーランが言うには、

ケイトちゃんの肉体が渦なんだって。

ウズよ渦。

銀河の中心みたいにあたしが宇宙次元の中心点なんだってさ。

ケイトが健康な女に成ることが次元を幸せにするんだって。

なんか漫画の世界よね。

だから、メディアに狙われないようベース側の人達に助けられてるの。


ああ、それでね。

皆が良い人に成ろうとしているこのタイミングで武装決起した集団が居たの。

初回作戦であたしたち善側が負けたわ。不覚だったのよ。

シャムロッド・ブルー大尉の5式戦1番機が撃墜されたけど。

ブルー大尉の機が一番戦果を挙げたの。あの人は本当に凄い。


ああ、今のあたしはね。一人で単独任務ですって。

ここ惑星チーズの民間国際空港で人まち。

トリン艦長殿がヤケに嬉しそうな顔してたけど・・・


「ケイトちゃん、はりきって行きなさい!」

「ちゃんと女の子の格好してね、お化粧は出来る?」


「はあ?」「艦長殿」

「あたしが何で女の子スタイルで行かなきゃいけないの?」


「いいからいいから、艦長命令だから」

「行かないと宇宙に捨てるわよ?」



建物内の広すぎるロビーは人だらけ宇宙人だらけだ。

あたしはなんか恥ずかしいなあ。

可愛らしいスカートにフリルのボタンシャツになんと。

お化粧が決まらないから、ノーマット副長たちに遊ばれた。

あたしの可憐なお顔がキャンバスと化したわ。


「・・・・・」


は、恥ずかしい。

建造物内の大勢の人が皆あたしを見ている気がしてきた。

あたしは突っ立ったまま、目標の男性の宇宙人を探すが。

宇宙人の団体に混じって、その男が見えた。

あれよね多分・・


「・・・・・」


「や、ヤン・」

「ヤンさーん」


蚊の鳴くような声で大きくゆっくり左手を振る。

なんかあたしが目立ってるから、すぐ気づいた。

彼と眼が合ったわ。彼が無言で近づいてくる。


「うわあ・・・むっちゃくちゃ恥ずかしい」


でも、ここで逃げて帰ったら義人たちの笑いものね。


「やあ、ラインハルト様ですね?」

「はじめまして、宇宙人のヤン・ベアリングです」


「は、はじめましてぇ、ケイト・ケチャップマンですぅ」

「隣の銀河系の宇宙人ですぅ」


・・・なんか若くてスレてない男だわ。そう見えるだけね。

この人の運命は凄いみたい。星の先駆者ねきっと。

あたし可愛い女で決まってるかなあ?

しっかし。

ラインハルトの義人たちがニヤニヤしていた訳はコレか。


「ヤンさんをラインハルトまでお連れします」

「駐機場であたしのリグレットが待機してますから」


あたしは彼の手を握ってお連れするの。

は、恥ずかしい。

若い男の宇宙人なんて・・・

彼の背後でスーツケースが浮遊しながら追いかけてくる。


彼は、訓練施設を出てきたところで忙しかったみたいね。

ベースであらゆる知識を学んで、宇宙訓練施設で過酷な訓練。

資料を見るとヤンさんは宇宙事故で身体の大半が失われた。

義体で身体を補うけど、彼は擬人とは言えないんだって。

宇宙人としての寿命と死を選んだの。


だからか・・・

あたしがオトコに飢えてるからこの先駆者をハメたのね。

彼は子供を作れる、ケイトちゃんも作れるんだって。

・・これから恋が始まるのかなあ?

確かに恋の予感はスゴイけど・・・


「・・・・」


この胸の高鳴りは・・・


ピッ


バクンッ


「どうぞ中へ・・・」

「コックピットルームで飛行をお楽しみ下さい」

「あたしは着替えてきますから」


「はい、ケイトさん」


・・・ケイトさんだって!

生きててよかった。

あたしは個室で着替えながら管理エーアイのマチコさんに命令する。


「マチコさん、ラインハルトまで行って下さい」

「お客さんの男性は、新しいクルーの宇宙人です」

「戦闘要員ですよ」


「はい、ケイトちゃん」


ボボボボ・・・・ビューーン



いつものあたし専用のド派手な子ども用宇宙戦闘服に着替えて。

コックピットルームに来た。

軽すぎるヘルメットを左肩にくっつけて。

宇宙戦闘用ヘルメットは宇宙服のどこでも任意でくっつく。

最近、赤毛を伸ばしてるから髪を上で束ねる。


「ヤンさんの宇宙戦闘服はラインハルトにありますから」

「擬人と違って宇宙人には必要ですからね」


「ケイトさん、宇宙戦闘服カッコいい」


「きゃ、嬉しいです」


確か、ヤンさんは実年齢は25歳だったよね。

あたしは20歳だけど。

生年月日はなんて言い訳しようか?


「ケイトさん、あなた達はファーム星系の英雄なんですよ?」


「え、ヤッパそ~なの?]


あたしと彼は2つ並んだシートに座り会話する。

もうスモールシップ「リグレット」は高高度を飛行している。

リアル投影空間モニタに自然の景色が映る。

青い空が透き通って濃いブルーがどこまでも鮮やかね。


「はい」

「僕は産まれた時からあまり良い運命じゃありません」

「だから、この次元の為に生きたいと願いました」

「分かりますか、ケイトさん」

「運命は意志に反応するんですよ」


「へえ・・・」


彼とのデートに成ってしまった。

あたしは彼の話を夢中で聴いている。素敵すぎるんだもの。

いちご牛乳をストロー飲みして乙女スマイルを決めるあたし。



本当に宇宙人男性のヤン・ベアリングは、

あたしたちクルーの活性剤になりうる。

検証はされてきたわ、擬人は人間以上の感性と知性を持つ。

でも、自然から産まれた野性ではないから。

イレギュラーとしてのたくましさが足りないのね。

だから絶対に、生き物である宇宙人が必要。


ラインハルトでは宇宙生命体はケイトだけだから。

あたし最初は密航者の家出少女だったの。

自分の故郷の惑星を捨てて逃げた女なのよケイトちゃんは。



「ケイトちゃん、チーズ平和維持軍前線基地です」

「ラインハルトの横に垂直着陸して駐機します」


えらく広い前線基地は、前回の戦闘で損傷した艦艇の修理が終わっていない。何十隻もシップが並ぶ中で、ラインハルトは目立つ。

高高度から降下をしているリグレット機内で、彼が言う。


「ケイトさん、僕は嬉しいんですよ」


「はい、あたしも理解出来ますよ」


「運命の加速が始まります」


「・・・ヤンさんて」

「ケイトと同じ匂いがするね」


「僕はどんな戦闘配置もこなします、役に立ちます」


「・・・この時代にヤンさんみたいな男が居るなんて」



トリン艦長殿が嬉しそうな顔で待ってたわ。

何でケイトちゃんをここまで面倒見るのか昔は不思議だったけど。

人を守るのが擬人の生きがいなのですって。


やっぱケイトちゃんは宇宙一のラッキー・イケ少女ね。


「ケイトちゃん!」

「乙女パワー全開で加速しなさい!!」

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