コードLP第二章

第46話プラネット・ブルー

第二部



ビィ・・・ビ・・・


ビ・・・



「マスター・ブルーベリー」

「コックピット射出をして下さい」

「この機体は飛行維持不能です、重力下での飛行は墜落します」


「・・・ええ、タケル君」

「残りの敵勢力のデータは?」


「はい、艦艇が24、戦闘機が36です」

「味方の兵力は苦戦しています」

「戦力バランスはこちらが不利です」

「すぐに全軍撤退して部隊を再編成するべきですマスター」


「・・・ええ、そうね。ラインハルトに救助要請を」


「はい」



あたしの5式戦1番機は、激しい戦闘でもう飛行不能に成るわ。

味方のチーズ平和維持軍は今も交戦中だ。

ラインハルトからかなり離れてしまった。

惑星チーズの綺麗な青空が、赤と黒の炎と煙で汚れてゆく。



まさか。


こんなことって・・・


何のためにケイトがこの宇宙次元を変えたのよ!


宇宙人ケイトが搭乗する2番機は幸いラインハルトに帰還した。

被弾した機体では撃墜されるだけだ。


「こんな奴らが居たなんて」


「・・・・」


Gキャンセラーのせいで知らない内に自機が撃墜されてゆく。


「・・・おねーさま」


「世界が・・・」


「世界が泣いている・・・」


ボシュ


戦闘エーアイのタケル君が待ちきれずにあたしをハコ射出した。

5式戦1番機が火を吹きながら墜落してゆくのが見える。


「・・・ごめんなさい、タケル君」




ラインハルト戦闘ブリッジ。


トリン艦長は険しい顔で戦闘指揮をしている。


「シャムロッド1番機から救助要請を受けました」

「ロドリゲス、救難信号のマーカーを目指して!」


「了解」


「ノーマッド副長、テッカの3番機に帰還命令を!」


「はい、艦長」


「いいですか、全軍に撤退命令が出ています」

「旗艦が沈んでしまいましたから」

「旗艦に成った2番艦から指示が出ました」

「当艦ラインハルトの防衛を優先するそうです」

「シャムロッドを救助するために3隻援護してくれます」

「スピードが命です、マテル駆動加速開始!全ノズル開け」

「もうこの区域は捨てなければなりません」


「副長、ケイトちゃんは?」


「はい、搭乗員待機ルームで休憩中です」

「ストラトスさんが機体を修理中ですが」


「あとは・・・?」


「忠犬ですよ、艦長」


「あ、あいつか」


「P様も居ますわ」


「あ、Pちゃんか、あの子何してんの?」


「さあ・・・」

「自室に居ると思いますわ」

「忠犬3型も一緒ですよ」



ダン・テッカの3番機が生還した。酷くヤられたな。

テッカは無事だが。



5式戦にも耐衝撃エネルギーフィールドが基本装備されている。

電磁バリアの内側にだ。

それでも被弾するのだから、物凄い暴力という証拠だ。




うん、過去の話をするね。


ケイトの手術中に、Pちゃんの生存を知った私たちは。

砂の惑星・猫じゃらしに向かったの。

Pちゃんがネコ語を連発してたし、それにね。

その前に寄り道をした。こっちがトリンには辛かった。

航行の途中、星間ネットでとんでもない情報を知ったの。

惑星猫じゃらしのショッピングモール巨大地下層が。

最下層が地下300階と公表されているんだけどね。

実はその下に更に300階あるんですって。

バカなと思ったから、その情報のヌシに会いに行ったわ。


主の住所が惑星ドーター。



私は後悔したわ、自分自身に。



護衛にシャムロッドとステンレスちゃんを付けて。

メールで待ち合わせた廃墟ビルに向かった。

M、と言う宇宙人(人間)男性。それしか教えてくれなかった。

トリンたちの素性全て隠さずに教えたわ、誠意だから。


でも、何か・・・



「シャム猫とステンはココで待ってて下さい」

「一人で来る約束ですから」


「はい、艦長」



じゃりじゃり・・・


コツコツコツ・・・


廃墟ビルの一室、何階だろう、3階?

電気もないから昼間から真っ暗だ。

でも擬人の目は人間ほど不便ではない。

部屋の中ですでに待っている、ミスターM。


「はじめまして、擬人のトリン・カスタネットです」


「・・・トリンちゃん」

「会いたかったよ。そう、何十年もね」


暗くても私には彼の顔スガタが見える。

老人だわ、杖をついていて体が弱ってるわね。


「あなたは一体ダレ?」


「おっと、トリンちゃん」

「そのでっかいケツに隠してるレーザガンを捨てておくれ」


「!」「・・・ごめんなさい」



暗い部屋で目の前に向い合い、立ったまま彼の話を聞く。


「私を知らないのも無理は無いね、トリン」


「はあ?」


「私がお前さんが守るべきだった男だよ」


「?」


「まだ解らないのかい、私が愛するはずだった擬人ちゃん」


「!」


「ああああ」


「マル・マールだよトりんちゃん、本物のマルじゃ」


白髪と白ひげのシワクチャな背が縮んだこの老人男性が・・・

本物のマル・マールさん!


そんな、生きていたなんて。


「信じられない顔をしとるな、トリンちゃん」

「確かに私は半世紀前に闇の者に殺されされたよ」

「でもな、あいつはマルが死んだのを確認しなかったんじゃ」

「私は、病院で死の淵をさまよった。何十年もな」

「根性でリハビリ回復を果たして」

「社会生活が出来る様に成ったのは、もう初老の頃じゃったよ」

「私も宇宙次元の先駆者だからね、知ることは出来るんじゃ」


「未来のための知性と叡智を」


「お前さんのために成りたいんじゃよ」



「ああああ」


トリンは涙が止まらない、洪水のように。

ヘナヘナと泣き崩れてうずくまってしまった。


「トリンちゃん、泣いてくれんじゃな」


がば


「あーーんっ!ごめんなさいマルさん!!」

「トリンはバカな女なんですぅ!」

「私を許して下さいぃぃ!」



私は彼に抱きついていつまでも泣いていたかった。

でも、Pちゃんを助けに行かなければ。

彼はすぐに今回の作戦に必要な情報・データをくれた。

私は彼に報酬をすぐに電子キャッシュで払った。


「マルさん」


「マル・マールさん。お願いですトリンを抱いてください」


「・・・いいんじゃよトリンちゃん」

「もう済んだことだ」


「いいえ、トリンの気持ちが収まりませんから!」


「トリンがあなたをいやらしく犯します!!」




「あ、やっとおねーさまが来たわよ」


「あれ?カスタネット艦長が、お洋服が無茶苦茶ですわ」


「ええ、緑色の髪の毛も爆発してるわね」



「・・・お待たせしました」


「行きます」




惑星猫じゃらしの救出作戦は、手ごわかったけど。

なんとかPちゃんは救出できたの。

やっぱ地下600階に居たわ、アホみたいな話だけど。


そん時の攻防戦のお話もまたのお楽しみにするわ。


全クルーで戦ったけど、ケイトちゃんだけ抜きでね。

あとね、マザーヒメギミがまだ救出出来ないの。

Pちゃんもよく知らないみたいだけど。



「じゃあ、Pちゃんはボディのメンテナンスどうしてたの?」


「にゃんだあ、監禁してくれてる下僕達に任せたのねえん♪」




「キャプテン・トリン。ブルーベリーのハコを回収します」


「ええ、ハコの真横につけて下さい。トリンが行きます」



海岸から離れた赤茶けた岩盤の平地にシャム猫のハコがあるわ。

中が見えないから生きてんだか死んでんだか・・・


私はハッチ開閉ボタンを探すが・・・無い。


ぶっ叩く。


バンバンバン!!


「シャムロッド!早く逃げないと敵が来るわよ!」

「早く出ろこのバカ!!」


バクン!


プッシュゥ


「判ってるわよおねーさま!」


「うわああ!!」


上空の敵の艦艇に狙われてる対地攻撃のレーザー砲が来た。


バッカーん!!バラバラバラ・・・


近くの岩の岩盤が消し飛んじゃった。

援護の味方艦艇が応戦を初めてるわ、逃げないと。


「行くぞネコ!!」


「おねーさま、もっと優しく!」


シャムロッド・ブルーの首根っこを捕まえた。


「ノーマット副長、2名転送お願いします」


「はい、艦長」



ラインハルトは味方の基地へ帰投する。修理と補給、休養。



この時点では惑星チーズは惑星内共同体政治になっている。

惑星全体でひとつの自治体が機能してる。

経済もバクチを廃止して積み重ねと信用からくる純粋な利益を求めた。


もう強くてズルく汚い人間の支配する時代ではない。



しかし、隠れて反乱を狙っていたヤミ側が武力をぶつけて来た。

皆を巻き添えにして爆死するつもりだ。



トリンの旅は終わらない。


・・・望むところね。こうでなくちゃ。

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