第44話忠犬3型
「あ、来た来た」
「ステンレスちゃんが来たわよ?」
5式戦に乗ってベースに到着したステンレスは。
「ニヤニヤしてる」
「恋人との生活がよほど天国だったのね、あの娘にとって」
5式戦がいきなり透明迷彩解除して着陸したから。
ベースの職員がみんな慌ててたわね。
「は~い!?」
「皆さん、おげんこ~?」
「・・・ステンレスさま、若くなった」
「そうね、サクラの言うとおりだわ」
「私もステンレスちゃんが綺麗に成ったのが判るわ」
「とおっ!!」
うわ、あのバカ。コックピットからハイジャンプしたわ。
ベシッ!!
「あちゃー」
「顔面着地してるこの子」
「ステンレスちゃん!」「あなた整備員の邪魔してるわよっ?」
「早く来なさい!」
「ケイトの手術が始まるわ!」
ラインハルトの全クルーがケイトのオペルーム前に集まる。
一人だけ居ないが。
マザー・ランの説明だと。
ケイトちゃんの病気は、とんでもないの。
簡単に言うと、この宇宙を変えるんですって。
あの娘の病気が解明されれば。
この宇宙次元が新しい進化をする為のキーを創れる。
だからいまだに誰にも判らないの。
その全容が。
この惑星チーズにケイトが来ることも。
チーズクラッシュ伝承に書かれてるのよ。
なんかウソみたいで信じられないけど。
確かに、
ケイトちゃんには、信じられないくらいの運命が味方している。
つまり、不幸が100ならコレを弾く幸運が1000在るのね。
歴代のマザーは皆、知っていたのケイトちゃんを。
事態はもっとスゴイ展開に成るんだけどね。
待機ルームでみんな待ってる。
執刀医が負担かかるから何人も待機してる。
手術前のケイトの顔が忘れられない。
「艦長殿、自分は幸せなんですよ?最初っから」
「うん、ケイトちゃんらしいわね!」
「女子高生!」
「あんた専用のセーラー服を作っとくわよ!」
「スリーサイズを教えなさい」
「げ、あたし最近太ったから・・・」
「いいのよケイトちゃん」
「ケイトの卒業式をするのよ」
「・・・・・」
あらら、黙ってメソメソしだしたわこの子。
「ほらあ、幸せじゃないですかあ!」
「あははは!」
ほんとにこの娘はとんでもない娘だわ。
オペが始まってから何時間経っただろう。
みんなの前にイキナリ忠犬3型が現れた。
「しゃあああ!」
「うわああ!おねーさま!核爆弾が来たわ!」
「シャムロッド!違うのよ」
「サクラがお手伝いします・・・」
広い待合ルームで忠犬3型がサクラの手で機械に繋がれる。
私とサクラは解ってる。
「え?」
「何で私も知ってるの?」
「サクラちゃん?コレってやっぱり・・・」
「はい、トリンさまの思ってるとおりです」
「お、おねーさま?」
「あたくしには何の事か判らないのですが?」
「テッカマン」
「入り口を警備して下さい」
「はっ!」
「おねーさま、ど~なってんの?」
「始まります」
サクラがルームの照明を消した。
フッ
犬のボディから光源が産まれる。
眼と口と鼻と耳からも光が産まれる。
ルームの中央の空間に場が発生する。
立体投影フォログラムだけど。
これは暗号化されてるし、この犬が守ってるんだわ。
「・・・・」
カラカラカラカラ・・・
「あ、あれ?」
「誰かが映ってるわ」
「でも後ろ向いてるし、それに・・・これって」
「下半身しか映ってないわよコレ」
「あさっての方向を映してる」
「ふんふんふん♪」
「あ、あなたはもしかして!」
「!」
「ああ、ごめんにゃん!」
「いま私ご飯作ってたのねん」
「火が強いから、お洋服が燃えるのよコレが!」
「面白いでしょお?」
「まあ、すぐに火を消すね」
バシャ!!
「お水というのよコレ、知ってた?」
「あ、あ、あ、あ」
「きゃ、トリンちゃん、何びっくらこいてんの?」
「ステンレスちゃん。こ、このかたは・・・」
「あ、あたくしも信じられませんわ・・・」
「あー、えへん」
「この映像は、録音ではない」
「リアル生電話であるワ」
「いまこの同時刻に、どっかの地で」
「私がお話してるんだなあ~コレが!」
私が指をさして口をパクパク。
「はいはい、トリンちゃん」
「私は今も生きてますよ?」
「お化けじゃないぞ!ごろにゃ~ん♪」
「あなたはPちゃん!」
「あたくしが文献で観た写真と同じですわ!」
「この子があの伝説の擬人、Pさまです!」
「またまたあ!およしになってっ先生さま♪」
「私はPちゃん本人だけどね?」
「今でもどっかで生きてんのだあ!!」
「おねーさま、この女の子が最初の擬人なの?」
「ええ、そうよシャム猫」
「こんなアホな話って・・・」
「あ~!!今アホって言ったなあ?」
「トリンちゃん!」
「あなたの行動は全部スゴすぎるのよ!」
「私の出る幕がないじゃんか!プンプン!」
「私はLP45W。Pちゃんだけど」
「Pちゃんはあだ名なのよ?」
「誰か名前をつけて~~ん♪」
「Pさまって、こんなに面白い擬人なの?」
「ステン、マザー・ヒメギミよ!」
「へ?」
「おねーさま、それって」
「Pちゃんが生きていることはつまり・・・」
「マザー・ヒメギミも生きている!」
「そうなのようトリンちゃん。早く助けに来てね?」
「私、待ってるわ」
「あ、ごめんねえ?ご飯が冷めゃうからもう切るねえ?」
「ああ、忙しいわあ・・・」
パタパタパタ
ブッツン・・・・
ルーム内に静けさが戻る。
みんな無言だわ。
「カスタネット艦長・・・」
「みんな!」
「今すぐ行くわよ!」
「おねーさま」「あてでもあるの?」
「導かれるわ!」
「コレが決定的よ!!」
「経験データもあるし」
「記憶クリスタルチップはそのためにあるのよ!」
「クリスタルソウルは共鳴するものよ!」
「ええ、あたくしはラインハルトの出港準備をしますわ!」
「行くのね、おねーさま」
「みんなで行くのよ!」
「大丈夫」
「ケイトちゃんは絶対にケチャップマン伝説に成る子よ!」
「ゴーッ!!」
ラインハルトがメインノズルに点火を始めた。
続いてサブノズル、すべての飛翔動力に点火完了。
金属音がマザーベース駐機ドック内でこだまする。
「マテルエンジンの熱効率を仮想変換して下さい」
「良いですか?」
「この作戦は私達だけの問題ではありません」
「この宇宙次元すべての運命がかかっています!」
「命をかけろよお前ら」
「私達は擬人だぞ!」
「この宇宙一の幸運に、嬉しくて泣け!!」
「カスタネット艦長」「男らしい!」
バウン!ボゥボボボボ・・・ドバビュ~~ん!!
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