第43話蒼い都市、チョモルシティ

「うわあ・・・」

「あのアホ猫トリを追いかけて、エイジ!」


「無理だよ」

「これはエアカーじゃないから地面しか走れないんだ」


エイジとの束の間の同棲生活。

まだあるのよ時間さまが。

今日は朝から、あたくしがビビったチョモル都市の海岸線。

エイジの愛車でドライブ。


「ねえ」

「あなたなんでこんな化石時代の車に乗るの?」

「かなり目立つわよ」

「みんなエアカーなのに、このタイヤって摩擦なの?」


「いいんだよステン」

「好きなんだよ、コレが」


「さっきからなにガチャガチャいじってるの?」

「遊んでるの?」


「コレがいいんだよステン」


「いじるのが良いんですの?」


「ギヤと言ってね?何段も変速して走るんだ」

「原始時代は人間が自分でイジるんだ」

「タイヤもね、滑るんだよズルズルと」


「まあ、あたくしには解らない異次元ですわ」


「うん、免許もマニアックだし」

「危ないスキモノの世界だね?」


「まあ!」

「エイジは好き者だったのね!」


「あははは!」

「もっと山の方へ行こうよステン」

「広いパーキングで運転させてあげるから」


「まあ!」

「あたくしも好き者にさせる気ね?」


「あははは!」



なんか長ったらしい地面の道路を這う姿は。

原始生物みたいですわ。

ひたすらガチャガチャして腕が折れないかしら?


「エイジ?」


「うん・・・」


なんか、エイジが本気モードで加速してるですが。

なんでクラッシュしないのかしら?

このカーには補正システムもエーアイ管理も何にもないのに。

ハンドルをクイクイするのは意味があるみたいです。

エアカーは免許は要らないの。

カーエーアイが運転させてくれないし。

ヤりたきゃ免許をお取りくださいですって。

この化石はその中で一番の好き者の免許ね。


「男ってやっぱ野性が好きですのね!」


「ステンも運転しろよ?」


キュラララっ!


きぃぃ!


ざしゃあ!!


がくん!


「うひゃああ、びっくらこいたわ!」


「着いたよ」


エアベルト固定を外して交代。


「ねえ、みんな見てるわよ?」


「うん、ステンが綺麗だから運転が見たいんだよ」


異常に広いカーパーキングでは。

化石カーはあたくし達だけだから、目立つの。

て言うよりどこでもじゃん。


「エイジ、判りますわ」

「座ってすぐ理解出来ました」

「運転入力が、反応速度と誤差があります」


「さすがステンレス」

「この山の頂上まで楽しんでみなよ」


「はい!」

「ステンレス発進!!」


ドコドコドン!


ボボボボ・・・


きゅらららっ


ドーーン!!


「ステン!エアベルトしろ!」


「あんだって!?」


「ベルトしろ!」


「ああ、ごめんなさい!」


あたくしは初体験のこの化石カーを一発でモノにした。

峠の地面ワインディングロードで。

化石カーをまるで自分の手足のように駆った。

上でのんびりしてるアホなエアカーが止まって見える。

今まさにあたくしは、野獣だ。

鳥肌が立つ、白い肌からスパークが走る。

白いパールの髪は電撃を放つ。

白いオーラだ、あたくしはオーラ女だ!

隣のエイジが、信じられないと叫んでビビりまくってるわ。

止まらない、止まらないのよ!

あたくしは誰ですの!!

あたくしは何者ですの?

視界がぐんぐん狭くなってゆく。

ガチャガチャ素敵すぎるです!

ハンドルって目が回りますわ!


「た、たまらーーんっ!!」


もう頂上パーキングに着いちゃった。


「はあっはあっはあ!」


ぐてん!


あたくし伸びちゃったわ。

イケナイ子ね。


「おい!ステン!」


だ、ダメだわエイジ。

こんなの初めて。

あたくしは今まで生きていたのですね?

無免許運転って何?



「うーーん」


エイジの部屋の布団で寝るあたくし。


「ステン、大丈夫かい?」


「うん、ごめんなさいエイジ」

「ご飯はあなたが勝手に製造して下さい」

「夜のお相手も今夜は出来ませんわ」

「なんか脳回路がぶっ飛んでる」

「その代わり、明日は理想妻を演じてみせますわ」


「はは、ステンレスは本当に面白い子だなあ」


「はい、好き者ですから・・・」



あたくしはステンレス・ノーマット。

擬人コード・LP8000JJですわ。

愛に生きるのも大変なのが確認できましたです。

ケチャップマンさんの手術に間に合うよう手配されてますわ。

ところでピョン子さんが海岸に隠れてましたね。

ラインハルトの補修データ。

あたくしがブッ飛ばしちゃったの。

もうバレたかしら?

いけない!

今は仕事は捨てるのよステンレス!

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