第40話ケイト・ボトムサウンド

「くんくん」


「匂うのだワン!」


「?」



ここは宇宙ファーム星系、ラージシップ・ラインハルト内。

B区画通路上で、後ろからワンちゃんがあたしに語りかける。

あたし専用のド派手な子ども用宇宙戦闘服が目立つのね。

左手に持つヘルメットが軽すぎて飛んじゃいそうだ。


わざとらしく振り向くと。


忠犬3型が・・・あれ?居ないぞ?



「ここだワン」

「これだから女子高生って言う淫乱メスは扱えないのだワン」


「あ」


反対の真上の天井に張り付いてるわ、ワン公が。


「あなたって、匂いで女子高生を嗅ぎ分けられる犬なの?」


「そうだワン!」

「お前は、偽物女学生だワン!」

「学生身分証を見せろワン!」


「ななな、ナニこいてんの?このクソ犬」


「ワッハッハッハッハ・・・ワン」

「みんな言ってるワン」

「ケイトちゃんは退役女子高生だから」

「気を使ってあげなさい・・・」


「笑えるワン!」


「あ、あたしって宇宙アイドルだったの?」


「しゃああっ!!バカなメスザルは食料にしかならんワン!!」


ぶんっ!


天井から降下開始して、下のケイトに食いかかった犬だが。

ケイトの右アッパーのほうが勝(まさ)っていた。


バキャッ!!


「キャインキャインキャイン!!」


忠犬ロボがこそこそ逃げていったわね。



「あ~!ハラ減ったあ・・・」


船内レストランで何か食べないと。



バシュ


「う~ん・・・」


「最近ゼイ肉がついてきたからなあ・・・」

「まあ、この成人男性用大盛り野菜サラダと・・・」

「高カロリーフライド・ポテトの超ビッグでいいや」

「のど詰まるからイチゴジュースの1リットル」


「うん!あたしってヘルシーよね?」



バシュ


あ、トリン艦長殿が見に来たわ。

ヒマなのねよっぽど。

白いテーブルに座って、あたしはパクつく。


「むしゃむしゃむしゃ」


「んぐんぐ」


じ~


向かい席に座って艦長殿が見てるわ。


「何ですか艦長殿」

「めぐんで欲しいんですか?」


「ケイトちゃん、あなた食べ過ぎじゃないの?」


「もぐもぐもぐ」

「何にも知らないんですね艦長殿」

「あたしくらいの歳のオンナは食べ盛りと言うの」

「食べ物を食いまくらないと体力が持たないんですよ」


「くっちゃくっちゃくっちゃ」


成人男性用大盛りサラダを食べ終わって。

高カロリーポテトをフォークで高速食い。

ケチャップで口の周りが真っ赤だろ~なきっと。


あ、艦長殿が物欲しそうな顔してる。


「はい、ひとくちど~ぞ?おいしいですよ」

「はい、あ~ん」


バク・・・


「ぐちぐちぐち」

「わ、美味しいのね。なんて言うのこれ?」


「フライドポテトも知らないの?」「マジ?」


「これがケチャップと言うのね?」


「いや、ケチャップはただの味付けであって・・・」


バビュン!


ありゃ・・・艦長殿も高カロリーポテトの超ビッグを選んでる。

無料自販機のキーをプッシュするだけなんだけどね。


フォークを握りしめてテーブルでワクワクしてる。


・・・わからない。わからないわ、この擬人が。

この擬人女性は飽きることを知らないのねきっと。




このシップはルートを引き返すんだって。

惑星チーズのベースで、あたし、ケイトの病気を治すために。

それだけのために帰るのですって。

ベースでは未来テクノロジーが可能だから。

あたしの難病も治すことは出来ると言ってた。


ホントかなあ?


だから最近あたし、ケイトちゃんがラインハルト船内でアイドルに成ってるんだと思うのね。



「ちょっと退役女子高生」


「何ですか大尉殿」


「あんた最近太ったわよ?」

「完全に食い過ぎね」


「またまたあ、ご冗談を」


「メディック・ルームでヘルスチェックしなさい」

「あんたまだ若い女なんだから・・・男が逃げてくわよ?」


「・・・・」



ヘルス測定データは・・・


「げげげ!これは現実なのかしら?」

「それとも、赤ちゃんが出来ちゃったのかなあ」


「きゃっ!あたしも大人じゃん?」




戦闘ブリッジにて。


「カスタネット艦長」


「何?」


「最近のケチャップマンさんは」

「ど~見てもヘンですよ?」


「そ~なの?」


「はい、直前の戦闘結果報告が・・・」

「手書きで漫画が描かれていましたし」


「きゃははは!」

「ケイトちゃんは本当に女の子なのね」

「うん!早く母星チーズへ行きましょう」


「レッツらゴー!!」


「はあ」




あたしはケイト。


ケチャップマン伝説には身体測定データは削除するわ。

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