第37話宇宙のゴミ(デブリ)

アステロイドベルト群をかわす為にラインハルトは、左舷に航路を変えて航行。



「カスタネット艦長」

「右舷のアステロイドの岩が破壊されています」


「え、何で?」


「この船から光線が出ています」


「な、なんですと~!?」


「誰かがマニュアル操作して照準射撃していますわ」



「!」


つかつかつか・・・


バシュ



「血を見るわね、ミスター・ロドリゲス」


「私も同じ演算です、ノーマット副長」




「おもっしれ~な、これ!!」


「そうだろワン!!」


ダン・テッカと忠犬3型がレーザー砲砲手席で遊んでいる。

ヒト用座席に座り、ゲームセンターの感覚で岩を撃破。

忠犬3型は真っ黒い鼻と短い前足でパネル群を連打。


「さっすが~!恩にきますぞ。ワンワン三銃士殿!」


「いいってことワン」

「それから僕は三銃士でもワンワンでもないのだワン!!」



バシュ



「はっ!」


「ん、誰か来たのか?」


「テッカ殿、振り向いてはならないワン」



「・・・あなたたち・・・・」



「おお、艦長殿もど~ですか?イッパツ」

「スカッとしますぞ?」



「キエーーーッ!!」



トリンがテッカの首をヘッドロックして引きずり回す。

右足で忠犬3型を踏んづけまくる。



「た、助けてえ~!!」


「痛いのだワン!!」



トリンとステンレスがB区画通路で会話している。


「ノーマッド副長」

「私が今からこの空き部屋を独房に改造しますから」

「できたら外に電磁ロック感電式を組んで下さい」


「で、ですが。ストラトスさんに頼んだほうが」


「いーのよ!」

「全部私がヤりますから」


「は、はい・・・」



ガーン!ガーン!ガーン!


バンバン! バチバチバチ!!


「ふんっふんっふんっ!」


全女子クルーがB区画通路で密談。


「ちょっと、おねーさまはど~しちゃったの?」


「艦長殿の身体から緑色のオーラが出てますよ?」


「ええ」

「あんなイキキとしているカスタネット艦長を見るのは」

「初めてですわ」


「サクラよりも強引な工事・・・」


「やっぱ、男のチカラって凄いですわ」


「おねーさまもただの女だからねえ・・・」





目的地。

砂の惑星「ネコジャラシ」に降下。

トリンの目が血走っている。


信じられない殺気を放つ。

緑色のオーラで目が眩む。


「か、カスタネット艦長殿・・・」



最新式パルスレーザーライフルを持つトリンは。

殺し屋の眼になっている。


「ブルーベリーさん、これは一体・・・」


「ああ、あんたは知らなかったわねステンレス」

「リベンジ・復讐よ。オンナの復讐」


トリンはお供にシャムロッドとテッカを選んだ。

忠犬3型が行くとうるさいので身体拘束。

ステンレスは、ついて行くかどうか迷った。


「いいです、ステンレス。あなたも戦力に成りなさい」


「は、はい」


計4名で。

ネコジャラシの砂嵐砂漠を歩く。

誰も居ない入口ゲートに入り有料エレベータで最下層、地下300階を目指す。


皆、無言だ。

今、地下99階。


「ねえブルーベリーさん」

「ど~してここに敵が居るって知ってるの?」


「来たのよ」


「へ?」


「おねーさまの脳回路にラヴレターが来たの」


「もしかしてフラれたの?」


「・・・そんなものじゃないわ」

「乙女を殺されたのよ」


「へ?」


また無言で最下層を目指す4人。

透明の強化ガラス越しにアーケード街が綺羅びやかに見える。

買い物を楽しむ金持ちの主婦たちを見ながら。

トリンが、ひとり言のようにつぶやく。


「ふん!!金持ちの人間は心が貧乏だよなあ?」

「笑えるよなあ?・・へっへっへっへっ・・・」


部下3名は、一番前に居るトリンが怖くて萎縮する。


「艦長殿、自分がオトリに成ります。歩兵戦は任せて下さい」


「頼もしいわね、テッカマン・・・全部殺せよ?」


「は、はい!!」


「!」


シャムロッドとステンレスの眼が最大開眼する。



最下層、地下300階に辿り着いた。


チーン


人工音声が金銭、小判通貨・1万小判を要求してきた。


「ほらよ、猫」


ビッビ・・・


バカーーン!!


トリンが最新パルスライフルでバースト射撃。

機械端末が木っ端みじんになった。

後ろの3名はガタガタ震え出した。

尋常ではないトリンに、信じられない3名。

血の海を想像する3名。



監視システムセキュリティは始めにトリンが無効化した。

脳・遠隔操作ハック、復旧まで十分間に合う。


全員、敵の誘導トラップで引きこまれだした。



真っ暗な通路からイキナリ・・・明るすぎる大部屋に居る。

100名くらいの私設軍隊が最新レーザーライフルを構えている。



「待ってたよ・・・俺のダッチワイフちゃん?」


「私もこの日が来るのを50年待ったわ」

「マル・マールさん?」

「透明部長1号だったかしら」


「おっと、今は専務なんだよ」


「お連れの面白い男は?」


「スクラッチか?」

「死んだよ」

「寿命ってやつさ」「人間だからな」

「俺だって延命処置してるんだぜ?」

「ヒューマニクスさ」


「まあ、大変ねえ」


「くくくく・・・」

「600歳のクソババアの妖怪が言うから笑えるなあ?」


「ふんっ!」


バシンッ!!


トリンが隠し持っていた電波グレネードを投げた。

敵兵5・6名が死んだ。いや居なくなった。


「テッカマン!!右翼に突っ込め!!」

「シャムとステンは左翼を殺せ!!」

「私が全部引きつける!!」

「早くイケこのバカ!!」


「!」


激しい銃撃戦が始まった。

トリンは産まれて初めての信じられない殺意に身を焼き焦がした。

敵の私兵をほとんど射殺した。


「ゲフッ・・・」


ドサッ


残りの兵たちが口や頭・腹から赤い血液を出血して倒れる。

装備のE・フィールドが、まがい物だ。

味方は派手にボディを撃たれたがE・フィールドが守りぬいた。

唯一の、ハニカムシステム装備の透明専務は無事だ。


「ど~したのかしら部長さん?」


「く!」


「ハニカミって」

「メンテナンスしないと効果が無いんですってねえ?」

「あんた達が・・・」

「トリン・ホトニクスの会社員、全員殺しちゃったからねえ?」


「・・・・」


「耐衝撃エネルギーフィールドだって、メンテは必要なのよ?」


「!」


透明専務が武器を下においた。


「参ったよトリン」

「俺の負けだ、好きにしろ」


「うん、好きにする」


バッ!!


丸腰になった専務の腹に、変なベルトを装着して離れるトリン。


「うわ~っ!?なんだこれっ!?」


「お前ら!逃げるぞ!!」

「シャム猫!出番だぞ!」


「わ、わかったわ。おねーさま」


「シャム猫に飛びつけえ!」


バババっ!


大爆発が始まる前にシャムロッドの能力、空間跳躍に入った。

シャムロッド以外の3名の意識はダウンした。




空港で駐機中ののラインハルト船内。


「あ、今インフォメーションセンタから来たわよ」

「ええと。地下最下層でテロ事件が起きたんですって」

「ストラトス中尉殿」

「ロドリゲス殿に緊急離脱命令をお願いします」


「はい、ケイトさま」




4名が戦闘ブリッジにテレポート転送完了。



バウンっボボボボ・・・・・ドバビューン!!





トリンの乙女は復讐の殺しを果たした。


艦長室。


殺しの美酒に酔うトりン。


「・・・・」


涙が止まらない。虚しくて悲しいだけだった。



「塩辛い・・・擬人も人間と同じ心が欲しいの?」


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