第32話51年後の惑星カニメシ

私たちラインハルト御一行は惑星カニメシに調査の為に降り立った。


のだけれど。

まずは遊ぶんですって。


「うわあ、ひどい砂嵐ねえ」

「何も見えないわ」


「おねーさま、バッカじゃない?」

「レーダーで見なさいよ」


「あ、そっか」

「い、痛い・・・」

「頭脳サーキットにインフォ・センタから刺さってきたわよ?」

「え、と。シャムロッド、これは何?」

「観光案内に、エアプレーンフェスティバルってのがあるけど」


「!」


「おねーさま!これよっ!これっきゃネーわ!」

「優勝賞金3兆アホンダラーよ?」「アホンダラー!!」


「3兆アホンダラーもあれば」

「母星チーズで、死ぬまで遊んで暮らせるのよ!?」


「シャムロッド、あなた自分が人間だと勘違い・・・?」


「?」


「ちょっとあなた達、ココは副長のあたくしが仕切りますから」

「ケチャップマンさんもストラトスさんも良いですね?」


「ノーマット副長が仕切り屋なら安心です」


「サクラも・・・」


ポッ・・・


「あれは・・・」

「ねえ、昔もココに来なかったかしら?」


「何寝ぼけてんのよ、おねーさま」

「50年位前にココに来て遊んだのよ、メモリロストしたの?」


「あ、そっか」



結局私たちは、優勝賞金の3兆アホンダラー目当てに。

化石ジェット戦闘機レースにエントリ。

全クルーで遊ぶんですって。


でも副座式に5人は乗れないのね。

会場の責任者のかたに問い合わせたら。

ダミーロボットを無償で貸してくれるんですって。

お一人で旅をされる方にも参加出来るようにですって。


親切な人達ねえ・・・


で、結局南極大陸。

誰がダミーミサイルを貰うかというと・・・

シャムロッドが自分から申し出た、びっくらこいちゃったわ。

彼女の操縦テクは、おそらく宇宙一だから。

本気で勝ちたいのね。


ハンガー内にて・・・


「自分で整備するお客さんなんて初めてですよ」


フェステバルの整備士の方がシャムロッドにコキ使われてる。


「あたしは50年前に、この機体に殺されそうになったのよ?」

「飛行中に爆発するバカがドコに居るのよ!!」


整備士の方たちが、機体の横で。シャムロッドに説教されてる。


で・・・


ケイトちゃんが操縦してサクラちゃんが後席なのは分かるけど。

ステンレスちゃんが操縦出来るかしら?

私はまた後部座席・・・・別に良いんだけどね。



「イケるわ!」

「今度こそシャムロッド・ブルーベリーの勝ちよ!!」

「だてに50年も遊んでいた訳じゃーないのよ?」




ショーは始まった。


「カスタネット艦長・・・」

「何ですか、このケバくてヒワイで派手な歓迎は?」


「気にしなくて良いのよステンレスちゃん、遊びだから」


「しかしコイツラ、仕事もしないで昼間っから・・・」


「ほ、ほら!私たちのことを紹介してるわよ!!」




「ねえ、ステンレスちゃん?」

「あなた飛行機乗ったことあるの?」


「カスタネット艦長、あたくしは衛星バターのベース施設」

「ミリタリーお嬢様スクールで」

「優秀な成績を収めて、飛行訓練過程を修了いたしましたわ」


「ただ・・・」


「え、何?」


「実戦も重力下飛行も化石飛行機も初体験ですが・・・」

「大丈夫です!」


「あわわわわ」


後部座席から見えるステンレスちゃんの後ろ姿は。

彼女の長い白髮が私の鼻をくすぐってクシャミ出そう。

ヘルメットするんだから、髪を束ねればいいのに・・・

イッチョウラの白い宇宙スーツは着替えないのね。

私は無料レンタルの飛行気圧服を着てるけど・・・・


「汗臭くてたまらん・・・」


ちゃんと洗濯しなさいよ!

レンタルヘルメットも臭い・・・


ビィィィィッ!!


「艦長!シグナルグリーン。ステンレス、発進します」

「発進っ!!」


ビリビリビリビリビリ・・・・


「あわわわわ・・・」


「ちょっとステンレス!あたしの滑走路をふさぐなあ!!」


「ブルーベリーさん?あたくしが先に滑走しています」

「あたくしの飛行を邪魔すんじゃない!!」


「す、ステンレスちゃん?」


「ケチャップマン少佐、一番を取りました」


「現在高度5000フィートを維持」

「コース内障害物を30ミリ・バルカン砲で撃破します」


「え、何?今度のレースは兵装もついてんの?」


「艦長殿、知らないんですか?」

「これは戦闘機ですよ?化石ですが・・・」


「うっひゃあああ」


「・・・・・」


「す、ステンレスちゃん?どーかしたの?」


「カスタネット艦長・・・」

「戦術ディスプレイに何か表示されてるんですが・・・」


「?」


「この『緊急離脱レバーを引け』という表示は一体・・・」


「ギャーっ!!」


「ステンレスちゃん!」

「今すぐにそこのレバーを引け!!」


「え、これ?」



バシュン!・・・バシュン!・・・・


火薬でキャノピーを吹き飛ばして、座席ごと上部にロケット射出。

ステンレスちゃんのヘルメットが飛んだ。

アゴヒモを知らないのね、さすが現代っ子。

白いパールに光るストーレートヘアが美しく流されてゆく。


「い、色っぽいわ、ステンレスちゃん・・・」


パラシュートが開き、となりの空中で語りかける彼女。


「艦長、一体どーしちゃったのですかあたくし達は?」


「機体を見なさい!ステンレスちゃん!」


「え?」


・・・ボンッ!・・・バチバチバチ・・・


戦闘機が空中爆発、破片が飛散しながら落ちてゆく・・・


「え、何アレ?」


「・・・あの時と同じだ」

「同じことが起こったわ・・・半世紀前と同じように」

「殺意の惑星、カニメシ・・・」


カニの祟りかしら。




「ケチャップマン少佐は」

「この機体が既に本来の性能をスポイルしている事を報告します」


「ちょっと女子高生!遊んでんじゃないわよ!」

「目の前に、ダミーミサイルが飛来してるわよ!」

「バレルロールでカワシなさい!」


「ば、ばれたロールケーキ?何ですかそれは?」


「ケイトさま。サクラがヤります」

「後部席に操縦系統をマワして下さい」


「は!助かります、ストラトス中尉殿!」




「あれ?ちゃんと高速バレルロール出来んじゃないのよ」

「さっすが、宇宙一の貧乏女学生ね。野獣少女!」



ピィィ-


アラート・・・アラート


「後方からレーダー誘導ミサイルが2機」

「チャフフレア射出・・・機体の機動を変えるわ」

「スロットル開度減速・・・高度を落として進路を急激に変更」


・・・・シュンシュン!


「ハン!この歴戦の猛者、宇宙パイロット・シャムロッド様が」

「化石ミサイルの餌食になんか成るわけがないのよ!」


「ぎゃあ~はっはっはは!!」


ズドーン!・・・




「あ、今・無線連絡が入ったわよ」

「シャムロッドがレーザー高射砲に撃墜されたんですって」


「何かヤリ過ぎではないですか?このフェスは・・・」


無事に落下傘降下着地して、砂漠を徒歩で歩いてる私達は。

とにかく脳内レーダーを頼りに、人工施設を探す。


「暑いわねえ。どっかに飲料水販売機はないのかしら?」


「艦長、砂漠に販売機はありませんわ」


「ステンレスちゃん、あなたってホントは男らしいのね」


「!」


「艦長、それホメてませんから!!」




徒歩でやっとたどり着いた庶民レストランで、ランチですって。


「いい?あれが化石兵器の恐怖なのよステンレスちゃん!!」


「ふ~ん・・・」


奥の窓際テーブル席は日差しが差し込んでいて明るい。

私たちは水だけ飲んで会話中。


「お客さん、何か注文して下さい」


「あ、ご、ゴメンナサイ」

「これが紙メニューなのかしら?」

「じゃあ、ステンレスちゃん何にする?」


「あたくしは『爆発済みミートスパ』でいいですわ」

「ドリンクに『コールド・美乳化促進ミルク』も」


「え、と私は・・・この『彼氏のカレーカレー』ね」

「あと、『無敵サラダ・無双風味』を」

「ドリンクは『ハイエナ用・光合成イチゴジュース』を」


「はい、ご注文は以上でよろしいですか?」


「はい」




結局、ケイトちゃんの機体が優勝しちゃったの。

エントリした機体は50機くらい居たのに、皆、脱落なの。

優勝賞金の「3兆アホンダラー」も頂いたけど。

こんな大金、何に使うのかしら?


殺意の星「カニメシ」・・・


知らないってステキ。


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