第30話ソウル・フィードバック
「艦長」
「カスタネット艦長!」
「はっ!」
「・・・・」
「擬人は居眠りはしません」
「意識跳躍をしていた、そうですね?」
「あなたも判るの?ステンレスちゃん」
「やはりあなたには、他のLPと違う側面があります」
「遥かな過去の記憶に何を見続けるのですか?」
「なぜ、未来を魅つめようとしないのですか?」
「ガーン!!」
「今頃気がついたわ私」
「過去に囚われ過ぎて、未来も魅れる事に気がつかなかった」
「ノーマット副長、ヤッパあなたは優秀なオペレーターね」
「キャプテン・トリン。シスター・サクラが呼んでいます」
「サクラが?」
「はい、すぐに行きます」
バシュ
「ミスター・ロドリゲス」
「以後の指揮はフルオート管制でお願い」
「了解しました、ノーマット副長」
「・・・・」
「トリン・カスタネット・・・」
「やはりあなたは、この宇宙を守るのですね」
「・・・・」
「本当の強さとは・・・」
「命を奪うことではない」
「命を救うことだ・・・」
「チーズ・クラッシュ伝承に記述されていた言の葉」
「想いは清き意志となって、相手に伝えることが出来る」
「・・・・・」
「愛・プログラム・・・」
「あたくしだって無駄に勉学した訳ではないわ」
「サクラちゃんどーしたの?」
「この機械がへんなの・・・」
「ヘンな機械?」
「ん?」
「これか・・・」
見たこともない物体。
小さな真っ黒い、四角いボックスは。
まるで生きているみたいに、ガタガタと揺れている。
「こんなものは」
「どんなマニュアルにもデータベースにもありません」
「トリンさま、サクラ怖いから持って行って・・・」
メンテナンスルームで一人で作業しているサクラは。
作業ツナギもボディも汚れていないわ。
たいしたものね。
「分かりました」
「私が何とかします」
艦長室に持って来ちゃったけど。
あれ?なんか眠くなってきちゃった・・・
私は無重力用ベッドで気を失う。
「おねーさま!」
「あたしだって人の役に立ちたい!」
「自分だけの為に何百年も生きて何の意味があるのよ!」
「シャムロッド・・・」
「艦長殿、自分は撃墜されません」
「自分が光ですから」
「だから、人に光を伝えます」
「ケイトちゃん・・・」
「トリンさま」
「サクラには言うことが出来ない秘密があるの」
「でも、言ったら私は・・・」
「サクラちゃん・・・」
真っ白な無。
音声だけが伝達される。
これは未来の記憶。
未来にも記憶はあるけれど、現実によって書き換えられてゆく。
「カスタネット艦長・・・あたくしは・・・」
「・・・・」
「ステンレスちゃん・・・」
「あなたは・・・」
私のクリスタル・ソウルだけで旅をする。
意識が現在に引っ張られる。
ソウルがボディにフィードバックされる。
ピシ・・・
視覚が戻る。
聴覚も。
戦闘ブリッジに行く。
「どれくらい意識跳躍してたのかしら?」
「未来を魅れるなんて、どーして気がつかなかったんだろう」
ビリビリビリビリ・・・
船内アラート警報だ。
「どうしました?」
「カスタネット艦長、変な奴らがきましたよ?」
「へ?」
「海賊船です、キャプテン」
「え、なにそれ?」
「リアル次元アニメ?」
「本物です、艦長」
「信じられますか?この時代に宇宙海賊がいい気に成って」
「正規軍の奴らをキリキリまいですよ?」
「確か賞金が・・・」
「ロドリゲス、いま幾らでしたっけ?」
「300兆・宇宙クレジットです、生死は問わず」
「うっひゃああ」
「艦長!指示を」
「あ、はいはい」
「総員、レベル7戦闘態勢」
「ステルス展開、マテルエンジン全開で離脱しますよ」
「もう遅いですわ艦長!」
ドドドーン!!
イキナリ海賊船にぶつけられたみたい。
「そんなアホな・・・」
透明迷彩を解いて、私達の目の前に姿を表した
ラインハルトの船体にへばりついている海賊船は・・・
「何これ?」
音声が割り込んだ。
「全武装の臨戦態勢を解除せよ」
「攻撃する意志の無い事を示せ」
「貴艦は既に我が船の手中にある」
全面エアモニタに割り込んできた映像音声。
普通の成年男子だ。
「キャプテン・トリン。初めてお目にかるかな?」
「でも俺は遥か過去からお前を知っている」
「だ、誰なのあなたは?」
「俺は、宇宙海賊。リーン・タンバリン」
「宇宙一の賞金首さ!」
「笑えよ?」
「あわわわ」
「おねーさま!」
「何なの?あのイカレタ、アニメおたくは?」
変なことが始まった。
私たちは無事で済むかしら・・・
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