第28話カインズ・ライフル

「ハーイ!」

「こっちですぅ~!」


宇宙ドック9番ゲート、ラージシップ「ラインハルト」に乗り込む窓口のロビーにて・・・


「おねーさま」

「人がうじゃうじゃ居てどっから声がすんか解かんねーわよ?」


「あ、あの人ではないですか?艦長殿」


さっきから広いロビーの一番奥でおもいっきり手を振っている女性が居る。


「ハーイ!」


「うわ!恥っずかしい・・・知らんぷりしましょみんな」


「トリン・カスタネット様でありますね?」

「お待ちしておりましたわ!トリン先輩!」


「あちゃー」


「はじめまして!」

「あたくしはステンレス・ノーマット」

「擬人コード・LP8000JJです!」


「・・・・・」


この、妙に明るい婦女子は。

背が高めで、細身の色白美人。ストレートの長髪は白くてパールに光っている。

肌は雪色で、瞳は黒くて?


「ゆ、雪女!」


「艦長殿!」


白い宇宙用ボディスーツを着てるから、雪ん子ちゃんね?


「シャムロッド・ブルーベリー先輩も」

「貴女の宇宙武勇伝は知れ渡っておりますわよ?」


「うわ、シャムロッドも名前つけてもらったの?」


「恥ずかしいから言わないでよ、おねーさま」


もう私のデータベースに彼女のデータを突っ込まれた。

オペレーションの才女、あらゆる分野をソツなくこなす。

オールマイティなマルチタイプ。

私の副長を努める。

みんな無言で自動飛翔通路を飛んでるけど。

ステンレスちゃんだけ高速マシンガンで喋り続ける。

シャムロッドが手を握ってきた、脳回路に直接語りかけてくる。


「おねーさま、あたしはあの腐女子の本性を知ってるわ」


「もう着くわよ、話は出港してからにして」



ドックに横付けされて居る、新造ラージシップ。

「ラインハルト」の雄姿が見えた。

見とれてる暇もなく、ステンレスに船内へ強引に押し込まれた。


「ほらほら皆さん!遠足じゃないぞぉ!」

「もう出港予定時刻をオーバーしてますわ」

「とっとと、配置につかねーかコラあっ!」


「す、ステンレスちゃん?」


「あらイヤですわ!あたくしったら・・・」


「さささ、艦長席はココですよお?」


どかっ!


「はじめまして、キャプテン・トリン」

「私はこのシップ、ラインハルトの管理A・I」

「ロドリゲスです」


「よろしく、ミスター・ロドリゲス」

「今すぐに出港して下さい」

「全システム初期化、マテル・エンジン点火」

「この宙域を離れます」


「トリン艦長、すぐに出られます」


ステンレスは隣の副長席に座って目の前の空間を見つめる。

エアディスプレイを開きエアキーボートを取り出して叩いてる。

この娘は私よりもオペレーション知能が優れてるわね。

もうラインハルトは宇宙域を離れた。


手際が良すぎるわねコイツら・・・プロ仕事。


「艦長、ファーム艦隊の旗艦『サーペント』からです」


上面空間サブモニタに投影される


「はじめましてシスター・トリン」

「宇宙空母『サーペント』」

「艦長、ヒリュウ・サカモト中将であります」

「すぐに貴艦とのランデブー航路へ」


「ええ、宜しくお願いします、キャプテン・サカモト」



ファーム艦隊・・・

母星チーズが所属する星系「ファーム星系」の宇宙連合。

もちろん平和維持が主目標なのだけど。私たち擬人の功績が認められている今では、軍艦隊との連携も、当てにされている。

この艦隊は、規模が50隻。

今どき宇宙空母を本気で運用するなんて。

このラインハルト装備の新エンジン「マテル・エンジン」は、

プラズマ世代よりも高速で微音・無振動。

Gキャンセラーが効いている・・・何も振動が来ない。

船内のカラーが無機質な白色で統一。一瞬で任意のカラーパターンへチェンジシフトが出来る。

船体色も白、宇宙戦闘機「5式戦」も惑星チーズで見たものは白だったが・・・

やはり白塗りの無機質なデザイン。工場出荷カラー。

サクラに色を塗ってもらいましょう。


「艦長、サーペント艦隊との実戦訓練を開始します」

「5式戦1番機、2番機」

「準備が出来次第発艦して下さい」


今度の船体は後部ではなく前部に2門カタパルト射出ゲートが在る。

ハッチが瞬時に開き、微弱な光源が前方へ一瞬で伸びてゆく。


「シャムロッド、発艦するわ!」


「ケチャップマン曹長、発艦します!」


一瞬で2機の光源が前方へすっ飛んでゆく。


「訓練スタートしました」

「艦隊の空母搭載機編隊との連携プレイをテストします」

「5式戦搭乗員は戦闘A・Iの支持に従って下さい」


既に空母サーペント所属・副座式宇宙戦闘機。

「フライング・スパルタン」数十機が。

遥か前方で待っている。

コンバット・フライ5式はミサキ重工製だが。

フライング・スパルタンはピース・ファクトリー製。

様々な各部の規格は統一されていて利便性が図られている。



また戦争の渦に入ってしまった・・・

私たち擬人には戦う宿命が在る。


人を守る筈なのに・・・殺すの?

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