占い師編
俺は占い師。新宿の父だとか、池袋の父だとか、銀座の父とか、秋葉原の父だとか、とにかくありとあらゆるところで父だと呼ばれているが、子供はいない。結婚もしていない。それどころかまだ俺は20代だ。みんな俺をおっさん扱いするんじゃない!!!
そんな話はどうでもいいのだけれど、今日も街角でお客さんの1人の相談を聞いていた。話を聞けば、29の女性だという。見た目は綺麗だが、何か深い悩みを持っているように見えた。
「あの…私一緒にいる人がみんな不幸になるんです。
家族は一家離散寸前までいって、私が原因だと気付いて、実家を離れました。
入った会社が半年以内くらいで大問題が起きて業績が悪化して、倒産する。それも一度や二度じゃないんです。今までの会社全部そうでした。
付き合った彼氏は私と付き合うとみんな、ダメ男になり、そのまま別れました。
私に関わる人はみんな不幸になるんです。一体全体人生どうしたら良いのでしょうか。」
今まで何千人も見てきたが、この女はマジでヤバいと思った。言葉を失った。
俺は翌日占い師を廃業する決意を固めた。この女によって不幸にさせられた人間の1人である。
それから1年ほどして、普通のサラリーマンになったが、あの女は一体全体どうしてるか、たまに気になっている。また周りの人間を不幸にし続けているのだろうか。
もしも自分が他人を不幸にするためだけに生まれてきたのなら、その人が生まれた意味とは一体全体何なのだろう、と思う。
それなら、もし神がいるのなら、なぜその人を生きさせるのだろうか、とも思う。
全ての人間に生きている価値があるのなら、多くの他人を不幸にする人間も価値があるという理屈になる。暗黒街の帝王も価値があるし、核ミサイルを作って人類を滅亡させようとする人も価値があると言う理屈になる。
対し、誰から見ても善人な人が突然死ぬケースもあって、一体全体人が生きる価値とは何なのだろうかと、考えてしまうものだ。
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