中世イングランド編

ある村に5人の若者が居た。5人ともその村を愛し、故郷を守るために騎士になる誓いを立てる。


王国の騎士は当時最高峰のエリートコースとして庶民が出世するための唯一の手段であったが、そのための倍率は数万倍と言われていて、また一般庶民の中でもある程度受験に専念する環境を整えることが出来る中流階級以上の者以外は受けることが難しい試験であった。


この5人の中で、一人だけ合格した。彼の名をウィリアムと言った。ウィリアムの合格に皆喜び、村中がお祭り騒ぎになった。ほどなくして彼は王国の騎士となった。


ウィリアムは合格時21であったが、三年ほどで中尉となり、若くして軍人としては申し分無い出世ぶりを見せていた。久々に村の者たちの宴会に誘われたため出席したが、王国軍人としての職業意識がすっかり身についていた彼は、村の発展しか考えていないかつての仲間たちのレベルの低さに苛立ちを感じるようになっていたし、仲間たちもウィリアムのエリート意識が鼻につくようになったので、お互い軋轢を感じつつ後味の悪い思いをしながらそれぞれの仕事に戻った。


「俺が命を投げ出す覚悟で任務についているのに、あいつら毎日楽して過ごして、税が軽くなることしか考えていない…」


ウィリアムはかつての仲間たちとの約束である、故郷を守るために騎士になったということに、意義を見いだせなくなっていた。


その一週間後くらいに、上層部の調査で、ウィリアムの出身の村には、魔女が出生するとの話が出回った。魔女村出身のウィリアムは勿論軍部内で立場が悪くなった。そこで彼は、自分が生まれてきた村を自らの手で焼き討ちする作戦を上層部に提出したのである。


「俺の血には魔女の血が混ざっていないことをこれで証明する。もし俺から魔女の血が微塵でも感じられるのなら、いつでも俺の心臓を一突きにしてくれ。」


ウィリアムは50名ほどの兵を引き連れ、魔女村と疑われた自らの村を焼き討ちし、女子供問わず村民たちを皆殺しにしたのである。


この功績により、ウィリアムは名誉を回復し、軍での地位を保つことが可能となった。のちに当時中将だったアモスの副官となり、最終階級は中佐であったが、当時作戦を決行していたアモスと供に謎の失踪を遂げたと言われている。

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