イルムくんのはじめてのおつかいです。
side イルム
戦争から三人で逃げて二日。道中魔物と遭遇することもあったが、特に問題なく『ボーツ』に辿りつくことが出来た。三人の移動速度は早く、三日の距離を二日で移動できた。これは、普通のテントより安心できる場所で睡眠が取れた事で、十分な休息が取れたお陰だろう。最も、休まったのは体力という点でのみだが。
「良いですか?先日もお話したように、イルムさんは『アルス』。ミリスタリア様は『ミリス』。私は『アリス』でお願いします」
昨日、村に入るという事で取り決めた事。これから逃げ隠れしながら北へ向かう事になる。その時、流石に本名では不味い。という事で偽名を名乗ることになったんだけど。
名前が全て『〇〇ス』なのはアリアさんの独断と偏見で決められたそうなので、俺は関与していないです、はい。
そんでもって今日から俺は公にはアルスとして名乗ることになったんだけれど。偽名を村では通すのは分かった。でも、村に入る上でもう一つの障害があった。
「まさか村に入るのに兵士の警備があるとは想定していませんでした……」
アリアが呟く。それもその筈、大きな『街』や『都市』ならともかく、『村』規模で兵士が警備をしているのは普通ではありえない。
村は木製の壁に囲まれており、この場所から見える入り口は一つ。
因みにこの村は『ザンダリウス』の国に属している。『アースヘルム』でもこのような村に警備がある事は無かったけど。
「困りました、ミリスタリア様の顔は美しさから有名です。顔を見られたら直ぐミリスタリア様と判明してしまいます」
「外套とか無いのか?」
「ありません」
という事で現在絶賛お悩み中である。
「取り敢えず顔が割れていない俺がこれからに必要なものを買ってくればいいんじゃないか?」
「そうですね。わざわざリスクを犯してまで村に入る必要は無いです」
「しゃ、シャワーは入れないのは仕方ないですよね……」
ミリスタリアには申し訳ないけど我慢してもらうしかない。
「お湯を出す魔道具は無いかもしれないけど、水を生成するぐらいの魔道具ならあるかもしれないから」
「お願いします!」
ミリスタリアに期待した目を向けられ、全く抵抗できないイルムだった。
………
……
…
村の入り口には警備の兵士が二人立っている。気怠そうに立っているように見える。腕は戦争に出ている兵士よりは低いように見える。二人掛で襲ってこられても問題は無く対処出来るだろう。
という事で、俺の設定は『放浪の旅人』。特に目的も無く渡り歩いている旅人だ。よし。
自分は旅人、と自分に言い聞かせながらイルム……もといアルスは村の入り口に向かう。
「はい、どうぞお入り下さい」
何も疑われることもなく村に入る事が出来た。はっきり言って拍子抜けである。それに村にある店と宿屋を教えて貰う事も出来た。都合がよすぎて逆に怖いくらいだ。
この村にある店は食堂と冒険者ギルドの派遣支部、雑貨屋が一つ。宿屋は冒険者ギルドが経営する宿屋が一つ。普通の村にしては設備は整っているだろう。
一番に立ち寄るならばやはり雑貨屋だろう。村に住む人達の必需品が全てそこで揃うという。
………
……
…
イルムくんのはじめてのおつかい!
こんかいイルムくんがたのまれたものは~~?
最低分
『日持ちする食料 最低一週間分』『水 最低一週間分』『剣のメンテナンスのための砥石』『三人分の姿を隠せるローブなど』『一般的な服や着替え』
これさえあればつぎのもくてきちまでいけるよ!やったねイルムくん!
可能であれば
『水を生成する魔道具』『質の良い寝具』『家具』
これをもしかえたらこれからのいどうがかいてきになるよ!
それにかわいいミリスタリアちゃんにほめられるぞ!ひゅーひゅー!
「ほら、あんた可愛い顔してるからサービスしてあげるよ!」
「あ、ありがとうございます!」
18歳のイルムは、この『ボーツ』ではあまり見かけない若者だった。この村では若いとうのはそれだけでブランドだった。
食料を二週間分の値段で一か月分の食料を購入。水の一週間分の値段で二週間分購入。砥石。黒い外套三着。イルムのサイズの男性服。
「流石に魔道具や家具は置いて無いね」
雑貨屋のおばあちゃんにたっぷりとサービスしてもらった。
「あぁ、でも宿屋にシャワー用の水を出す魔道具が設置されてるよぉ」
そして良い情報も聞けた。
「ありがとうございます。何から何まで……」
「良いのよ!若い子なんて早々こないからね。それに売れ残っても損だからね」
「ありがとうございます。それで最後にお聞きしたいことがあるんですが……」
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