閑話 寝起きの一コマ

side イルム


朝、イルムは何時もと違う感触で目を覚ました。寝袋のせいか、少し体が硬い気がする。起き上がり、自身に『洗浄』を掛ける。体がスッキリした所で、起き上がる。


二人はまだ寝ている。


結局、あの後の魔物の襲撃は無し。邪魔されずに(魔物に)眠ることが出来た。少し寝不足だけど、再度今から眠る気にはなれない。


二人が起きるのにも時間がかかりそうなので、気分転換と警備を兼ねて外の空気でも吸ってこよう。




~~~



side ミリスタリア


ふぁああああ、むぅぅぅぅん。ねんむいです。…………んぅぅん。


虚ろな目でミリスタリアは歩き始めた。



………

……



な、なんだかわかりませんけど、物凄い幸せな匂いがします。と言うか感触も、気配も。全てが幸せに包まれている気がします。


「あぁ~これ好きぃ……」

「ちょ、ちょっと!起きてミリスタリア!」


その声を聞いて私の意識は覚醒するのだった。



~~~



side イルム


森の木を眺めてボーっとすると、なんか浄化されるというか何というか。戦いだけの生活から少しは離れられた気がする。ここなら少しぐらいゆっくり寝れるかもしれない。


朝の心地よい風を浴びて、寝不足のイルムは再度意識を落とすのだった。



………

……



一時間ほど経っただろうか、近くに近づいてくる気配を感じる。この気配はミリスタリアかな?土と草に預けている体を起き上がらせる。


目を開けるとやはりミリスタリアがテントの入り口から出てきていた。


「お、おはようミリスタリア」


昨日あんなに意識した相手に平然と話しかけることが出来ないイルムだった。


「ふぇぇあああん」


そして返ってきた返答は意味を成していない言葉?だった。


「み、ミリスタリア?」

「はふぅ……お肉……?……いや?もっと…………いい……も……」


何かもごもご言っている。そして両手を上げて、こちらにゾンビのように迫ってくる。よく見るとミリスタリアの目は半開きである。


「だ、大丈夫か?」


そんなこんなであたふたしているイルムの体をミリスタリアの腕は捉える。そして躊躇いも無くイルムの体に抱き着く。


「…………っ!」


イルムの脳内で雷が落ちた、気がした。昨日あれだけの脳裏について離れなかった顔が目の前に。その衝撃的な状況を理解するのにイルムは一分ほどかかった。


「あぁ~これ好きぃ……」

「ちょ、ちょっと!起きてミリスタリア!」

「……んぅ?」


ようやく目を覚ましたのか、半開きにしていた全て開く。


「……え?」

「……」


ミリスタリアは理解する。目の前にイルムがいる事。そして、とてもいい匂いがする事。あぁなんて幸せ……。


「は、はぁぁぁぁあ!!?」

「ゴフッ!?」


ミリスタリアはその力を以て自分より重いイルムを『背負い投げ』した。思いっきり投げられたイルムは木の根元に激突する。イルムの激突を受けた木は、なすすべもなくミシミシと音を上げ倒れる。


その後、轟音を聞いて駆け付けたアリアに呆れられ、ミリスタリア只々赤面する事しかできないのだった。

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