やっと逃げます。
『ザンダリウス陣司令部』
「何故だ!何故ミリスタリア様は帰って来ない!腕輪の位置情報も特定出来ず!どういう事だ!」
二日目が終了し、両軍共互いの陣へ撤退している中。ザンダリウス陣司令官『フリージア・レジオン』は憤怒していた。現在、鍔迫り合いが終わってから大分時間が経っている。昨日は終わってから直ぐに帰って来たというのに。
あぁ、思い通りにならないミリスタリア様。何故私の元に来てくださらないのか。
「き、気をお鎮め下さい!フリージア公爵殿!」
「あぁん?」
後ろを向くと何時も小煩い侯爵がいた。
「今ここで狼狽えてもどうにもなりません。捜索隊を派遣いたしましょう」
「……それもそうだな、捜索隊を編成し、ミリスタリア様の行方を探せ」
先程は狼藉な振る舞いをしていたが、彼は状況を見失う程の無能では無い。才があり、実力も付いた。美貌があり従う者も出来た。
幼い頃から努力する事無く、実力を持っていたフリージアは父の不慮の事故があり、公爵家を引き継いだ。
ミリスタリアの事は一目見た時から想っている。要するに一目惚れという奴だ。これまでどんな女をモノにしても、どんな女を抱いても。この高鳴りを感じる事は出来なかった。
ーーミリスタリア、手に入れる事が出来ない女
ーーだが、そこが良い
得難い物こそ、得た時の喜びは大きい物となるだろう。
〜〜〜
side イルム・ミリスタリア・アリア
話し合いの終了後、三人は出発の準備をしていた。準備といっても、イルムはそう大した準備があるわけでも無い。携行しているアレの確認ぐらいだ。
ミリスタリア達はアリアが所持している魔法の腕輪の中身を確認している。
「食料は三人で三日ぐらいですかね」
「それなら途中でとこかの町に立ち寄らねばなりませんね」
程なくして、全員の準備が完了する。
「それでは通信用の腕輪を破壊しましょう」
「はい」
「うん」
位置情報を特定できる腕輪は壊すか置いて行かねばならない。これで逃げている場所が特定されてはたまったもんじゃない。
「良いですか?これを壊したら今から全力でこの戦場を離れます」
「「はい」」
「先ずは北へ。目標としては中立国『セントルイス迷宮国家』へ向かいます」
目指すは北、中立国のセントルイス。中立国として、ザンダリウスとアースヘルムのどちらにも加担していない。
「では手を合わせましょう!」
「「手を?」」
ミリスタリアの提案にイルムとアリアは頭を傾げる。
「これから苦難を共にするんですから……そ、そう験担ぎって奴です」
「ミリスタリア様、意味が違います」
「……え?」
シーンと静まり返る空気。
「も、もう。そんなのどうでも良いですから、ほら手を合わせて!」
恥ずかしいのか、ミリスタリアは顔を赤らめ手を差し出す。
「姫様がおっしゃるなら」
と、アリアはミリスタリアの手の上に自分の手を重ねる。
「なんだかわからないけど俺も」
イルムも二人の手の上に自分の手を重ねる。
「では!これから頑張っていきましょう!オー!」
「「お、オー?」」
「合わせて下さい!えいえいオー!」
「「オー!」」
ミリスタリアは満足したようで、うんうんと頷いている。
「じゃあ破壊しますね?」
そうしてミリスタリアは俺とミリスタリアの腕輪を踏み潰す。
ーードゴォォォォォォォォン!
「「…………」」
確かに、確かに腕輪は壊れた。木っ端微塵に。それはもう見事に。しかし……。
「ミリスタリア様、やり過ぎです」
「……あ、あははは」
クレーターが出来ていた。
今の音は戦場まで届いたかもしれない。というか確実に聞こえていただろう。
「逃げるぞ!」
「うわーん!ごめんなさーいイルムさーん!」
こうして、三人の逃亡生活が開始するのだった。
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