話しました。
こうしてまさかの戦争をサボり、お話する事になった二人。一応剣は同じ位置に置いている。二人は木の幹に背中を預けて座っている。
「でもお話ってなぁ」
「……そうですね」
上っ面ではこのように取り繕っているが。
((二人っきり!!?))
動揺していた。これまではなんやかんや戦闘などで意識する事は無かったが、互いに互いを意識している。
「……とりあえずもう一度自己紹介するか。さっきのはちょっとテキトーだったし」
「そ、それはいいですね!」
緊張しているせいなのか会話がぎこちない。
「……コホン、まず俺からだな」
アースヘルム国所属、イルム。年は18歳。軍部で働いていく度に実力が上がり今では『東の切り札』と呼ばれるまでに成長。昔に両親を亡くしているために生活はイルムが全て自分で行なっている。これまで戦いと訓練漬けの毎日だったので異性交遊経験は無し。
「同い年じゃないですか!」
ミリスタリア・ザンダリウス。年は18歳。ザンダリウス国の第2王女。小さい頃から剣の才能があり、訓練により成長。『西の姫騎士』と呼ばれるまでに。その容姿は国一番と言われる。その為、多くの貴族から言い寄られているが、未だに相手は居ないという。
「さて、自己紹介も終わった事ですし。イルムさんに言いたい事があります」
「は、はい」
「ミリスタリア様やお前と呼ぶのはやめてください。敬っているのか下に見てるのか分からなくなります」
「……じゃあなんてお呼びしたら」
「ミリスタリアで構いません。今ひとときのこの時間かもしれませんがここは一応戦場。しかも貴方と私は敵同士。無礼講でいいんですよ」
「そ、そうか。わかったよミリスタリア」
サラッとこんな事を言ったミリスタリアであったが、激しく鼓動する心臓は鳴り止む事は無かった。
(ちゃ、ちゃんとそれっぽい事言えた!)
ミリスタリアは戦闘中より緊張するこの状況に混乱していた。
「あぁ、じゃあ俺の事もイルムでいいよ」
「はい。イルム」
「ミリスタリア」
互いの名前を呼ばれただけなのに互いの心臓の動きは激しくなる。何分二人ともこのような経験は無いので、自分の状況が分からない。
「な、なんか恥ずかしいな」
「えぇ、それは私も同感です」
〜〜〜
二人は語り合った、自身のこと、最近の悩み、嬉しかった事、悲しかった事を。
「それでアリアったらとても厳しい事を条件に加えたのです!」
「そ、それって……」
話していた最中、突然声が響く。
『ミリスタリア様!お戻り下さい!今日の戦は終わりです!』
ミリスタリアの右手に付けられていた腕輪から声がする。
「終わり……か」
「えぇ……残念ですけど」
気がつくと日が暮れていた、戦いは昼過ぎに行われた筈なのに。時間が経つのが早いと思ったのは鍛錬以外には初めてだった。
「「話し足りない」」
二人の口から同じ言葉が飛び出た。互いに顔を合わせ、赤面する。
「私、まだ貴方といたい、って言ったら……どうします?」
顔を真っ赤に染めながらミリスタリアが言う。その言葉はイルムに対して破壊力がありすぎた。
(……か、かわいい)
イルムは混乱していた、まさか今日知り合った女性(しかも超絶タイプ)にこんな事言われるなんて。ちょろいと言われれば否定は出来ない。混乱したイルムの脳みそはこんな答えを導き出した。
「……俺も……離れたく無い……です」
会って数時間、この光景を誰かが見たら『単純すぎる』などと言うのかもしれない。しかしーーー
「ならーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます