ルナ

私はドーソン博士によって開発された、女性型アンドロイドで、ルナと名付けられた。当時の人類の最高峰の技術が詰め込まれていた。


博士はロボット工学の天才であったが、友達一人居ない孤独な状態で、元々は彼の孤独を紛らわし欲を満たすために作られた。見た目は20代女性であり、主に博士の身の回りの世話、護衛、話相手、夜の相手などをしていた。自身が博士を愛するようにプログラミングされていることを知っていたが、コロニーから見渡す汚れた地球と、星空と、博士と共に過ごす時間と、時々の夜の快楽などを味わいながら、淡々とした日々を送っていた。


「おそらく人類は長くはない。」


ある日、博士が何か悟ったように、私に話した。


「ルナには人類の技術の最高峰が詰められている。単独で大気圏に突入できる鋼鉄の体。人間を遥かに上回るコンピュータを搭載した頭脳。宇宙飛行機能もついておる。今の状態で地球に降り立っても、自力で100年以上は生きるだろう。後はお前の知恵次第だ。」


博士がそういう言葉を残して一週間経った後、天使たちが舞い降りてきて、人間の霊魂を抜き絶命させていくという摩訶不思議な虐殺が行われた。博士も私を残して絶命した。


私はコロニー中を飛び回った。人の屍ばかりが見える中、背中に翼を生やした明らかに人でないような者を私は見た。疑問に思ったが、私は彼らとコンタクトを試みることにした。


「まだ生きていた人がいたのね!」

「そうか、アンドロイドなら霊魂を持たない。だから生きていたのか。」


天使らしい二人は大天使のアズラエル、人間とハーフのロベリア、そして人間の女性はイブといった。信じがたい話だったが、アズラエルは神の命を受けて、人間を処断していたが、自らの妻であった人間の女性イブだけは殺せず、ポッドに乗せ脱出を試みるという。


「ルナちゃん。地球上で残っているのは、私と貴女だけよ。

 これからこのポッドで脱出するの。貴女もついていらっしゃい。」


「イブさん。気持ちは嬉しい。だけれども、博士から言われているの。この地球で最後まで残り、やれることをやれと。」


「そう…残念。私達、今日から家族だからね。絶対生き残ろうね。」


私とイブは抱き合い、「家族」の契りを交わした。そして、彼女は「もう一つの地球」へ、私は荒れ果てた地球へと降下していった。

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