第3話:三井銀行へ祖父の口利き

翌日、面接会場に入った安田達夫は、会社の人に指名を名乗って挨拶した。やがて、達夫の面接の順番になり、面接官が何故、ソロバンを始めた動機はと聞いてきたので、父と祖父が将来、計算だけはしっかりやっておかないと、金勘定で誤魔化されて損すると言われ、半分強制的にソロバンを始めましたと言うと笑い声が上がった。


 私も人に負けるのは嫌いな性格なので大会に出場すると必ず3位以内に入って表彰状が欲しいので頑張りましたと答えた。そうして、全国珠算教育連盟2段、全国珠算学校連盟3段を取得したのですと正直に話した。


 個人的な事だけれどと面接官が断ってから、一橋大学を落ちた後、なぜ、早稲田、慶応、明治、立教など東京6大学を受験しなかったのか質問してきた。理由は、簡単、両親がケチで学校にそんな大金出す位なら、働いて稼いだ方がよっぽどましだと言ったためですと答えると、なるほどねと納得したようだった。同じ質問で、君は反発して私立大学に進学させてくれと強く言わなかった理由は、何ですかと、聞かれた。それに対して、僕も金が欲しいので稼ぎたいと思ったからですと答えると銀行向きだなと笑った。

そこで面接終了となった。


 その後、合格の通知をもらって4月から三井銀行日本橋支店に勤務と伝えられた。自宅に帰り合格したと言うと家族で喜んでくれた。今、使ってない離れを使わせてくれるか聞いた。すると、直した方が良い知れないと言い、達夫が、友人のお父さんに安く直してもらうと言った。それなら良いと許可してくれた。


 お父さんが、4月から食費1万円をもらうからねと、言ったので分かったと答えた。その後、友人の佐藤光男君の家に行き、土建屋をやってる彼のお父さんに、自分の家の離れを使いたいので改修して欲しいんだけれど、見積もりをとってくれませんかと聞くと、明日、夕方4時頃、伺うと言ってくれた。


 4時前に佐藤君の父、佐藤進さんがき来て、離れを見ると、大きいね3間あるんだねと言い、どこに住むのか聞くと8畳の奥の部屋と言うと、それよりも、入り口の8畳の部屋の方が換気しやすくて住みやすいよと言った。そこで入り口の部屋を見てもらい、電気コンセントはいくつ必要と聞くので、1ヶ所に何個のコンセント使えると質問すると3口までと答えたので3口で何カ所と聞くので2ヶ所と答えた。


 次にすきま風が入らない様にして欲しいというとわかったと言った。電気コンロも必要かと聞くのでお願いしたいと答えた。すぐに、戸を外して改修できるか、取り替えかを見てくれて、小槌でたたいてピッタリと閉まるのを確認して、これで大丈夫と言った。冷蔵庫とファンヒーター、クーラー、テレビはいるかと聞くので、クーラーとファンヒーターと冷蔵庫は欲しいと言い、テレビはいらないと答えた。


 冬に、寒かったら、見に来ると言ってくれた。改修費用はいくらですかと言うと、コンセント2つで千円で良いと言い、給料入ってからで良いよと言い。冷蔵庫、ファンヒーター、クーラーは、程度の良い中古品があったらとっておくと言って、安く譲ると笑った。気さくな人で、本当に助かった。


 翌週、午後7時頃、土建屋の佐藤さんが突然来て、新しい蛍光灯が3つ手に入ったから、取り替えてやるよと、離れの古い蛍光灯を交換してくれた。すると、父が酒を1本わたすと、喜んで、お代はいらねえと帰っていった。

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