その名ふたたび
「さて、お
館の
(
構えた拳銃ごしに、玄関扉の
窓の向こうから、
その近くに立って、同じようにこちらを見つめる白い着物の美しい女。
化物が立っているのは扉の外だが、白い女が立つのは扉の内側、玄関ホールの中だ。
女が突然
どうであれ、まともじゃない。
……しかし……と三音子は思う。
(外の化物にしろ、
これは三音子の直感。理屈なんて無い。
以前、
同時に、こうも言った。『しかし論理を突きつめて、突きつめて、最後の最後、正解への
(……
そこで、やっと気づく。
(そうだ、まずは連絡だ。
心の中でそう思った瞬間……白い女がビクッと体を震わせ、振り返って、
化物と幽霊、ほんの一、二秒、目と目を合わせる。
突然、「ヤッ! 待ってくれ!」と外の化物が扉ごしに三音子へ言った。
「どうか……どうか、外部への連絡だけは
今度は、三音子のほうがハッとする番。
(何だ? 何だってぇんだよ!)
決して口には出していない。
それなのに、扉の
(まさか、あいつら、他人の頭ン中が読めるとでも言うのかい?)
少しだけ
拳銃を持つ右腕にグッと力を入れ直した。
「頼む! 知らせないでくれ!」外に立つ美男で怪物の男が言った。
「私たちのことを外部に知らせないでくれ……私たちは恐ろしき犯罪組織、恐ろしき秘密結社に追われているのだ……並外れた科学力と鉄の結束力を持った、地獄の鬼より恐ろしい奴らだ! どんな連絡手段も傍受の危険を
「あんた、何を言ってるんだ!」と三音子。「犯罪組織? 秘密結社? いったい何の話しさ? ほざくのも良い加減に……」
「
「何ッ!」
「アッ!」
化物が叫んだ名を聞いて、三音子と
「なぜその名を知っている!」と三音子。「答えによっちゃ、承知しないよ!」
男は屋敷の中にいる三音子と富喜子の態度に驚くが、再び振り返った白い女と目を合わせ「なるほど、そういう事か」と
「奥方……」男が覗き窓から三音子を見返して言った。「どうやら、あなたと……それから後ろに隠れている女中……
「そっちこそ! 何を知っている! さあっ、洗いざらい白状をし」
「まあ、待て、待ってくれ……こちらも語れば長い因縁話だ。しかし、今は一刻を争う緊急事態と理解してくれ。私は
「本当かい? ……助けてやったら、
「ああ。二言は無い」
三つ数える間に決心を固め、背中の富喜子へ振り向いて言った。
「
「エッ?」と、女中の富喜子。「私一人をこの場に残して、奥様たちは
「何を今さら怖がっているんだ……度胸を決めて、シッカリ留守番してな。油断なく銃口を奴らに向けて、一瞬でも
そう言い捨てながら、三音子は、もう廊下の奥へ歩き始めている。
物の言えない運転手の
富喜坊、仕方なく銃を受け取り、言われた通り、銃口を化物男と幽霊女に向けて構えた。
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