第5話 真夜中の告白
カラオケのお支払いを済ませた。
旦那さんに連絡をした。
クロが家に泊めてくれることになったからだ。
『ごめん、クロちゃんちに泊めてもらうから今日は帰りません~』
旦那さんからはいつもの返しだ。
『浮気か~おやすみ~』
はぁ。
なんなんこれ。
とにかくこのまま家に帰ってもクロにも説明がつかないし、そもそもわたしが意味わかってない。
「とりあえずここからタクシー乗ろっか!」
クロがタクシーを拾ってくれたので
クロの家に向かった。
「お邪魔します~」
「上がって~何も無いけど~」
といつものやりとりをしながら靴を脱いだ。
着いたのは11時半ぐらいだった。
途中のコンビニで買った暖かいお茶を出して私とクロは2人座った。
飲めるのか飲めないのか分からないけど、この謎のおばけ2人の分もお茶を買ってきてあげた。
「で、あんたら、出てきてくれる?」
よく見るおばけみたいに、
ぼわ~んと浮かび上がって出てきた。
わたしは殴りあって蹴飛ばしてなんか慣れてしまったけど、
クロはおっかない顔してズサっと少し引いていた。
「2人ともごめんね。特に友達は関係ないのにこんなことになってごめんね。
でも、気づかれたからには存在を認めてもらわないと僕達地獄に落とされちゃうから...それに協力者は多い方が助かるんだ。
でもここでの話は僕達だけの秘密にしてほしいな」
申し訳なさそうに青年は深く謝った。
「まず、僕らはずっとみかんちゃんのそばにいたことは知ってるよね。
僕らはみかんちゃんが産まれる前からみかんちゃんを知ってるんだ。
そして、僕達は生前、2人で1つだったんだ。
僕の名前は善。善い行いを導く『善』。
そして、彼は悪。悪い行いを導く『悪』。
ちなみに僕達はとうの昔に肉体は死んでいる。おおよそ500年前ぐらいかな?生まれも日本じゃない。ドイツなんだ。」
なにもかもがトンチンカンだ。
2人でひとつ?2人はプリキュ〇か?
違う違う。何言ってるんやわたしは。
そもそもドイツの人で500年前に死んでる?
意味がわかりません。
ここはもう厨二病の世界なんだと言い聞かせる。
「うーん。
で、ドイツで500年前に亡くなったあなた方は何者なの?普通の一般人なの?なにかしたくて500年以上の時を経てここにいるんですよね?」
わたしはサラッと聞いてみた。
クロはお茶をがぶがぶ飲んでいる。
少し動揺している。
わけわからんよな、そら。
「まぁ、あんまり正体を言うのもどうかなって思ったんだけど、、、隠す必要も無いし、僕らがなんでここにいるってことにも繋がるし...」
善はごにょごにょと話す。
「君らはファウストって知っとるか?歴史の教科書ってやつで聞いたことないか?わしらは載ってないのかのう...」
『ファウスト...?』
わたしとクロは声を揃えて言った。
2人とも、なんとなく知っている気がした。
あ...!
昔好きだった「シャーマン」漫画にファウストって出てきてた!!ファウスト!!
あのネクロマンサーの人!?
でも名前同じだけ?わからんけど...
クロはスマートフォンで「ファウスト」を検索している。
「あの、ネクロマンサーとかなんとか、漫画で見たことあるかも」
わたしは軽く口にした。
クロが調べた結果のスマートフォンの画面を善と悪に見せた。
「もしかして、これかな?
このファウストって人??」
「そうそう。当たりだよ。
でも意味わかんないよね~。あははっ」
善は呆れ顔で笑って言った。
わたしもスマートフォンで確かめる。
「なんかすごい人やったんやね。でも...悪魔と契約したの?そんなことできるんや」
「そう!いいところに目をつけたね!
僕らは悪魔と契約してしまった。そのせいで死後も悪魔にずっと捕えられてたんだ。
それは仕方がなかったんだ。でも、悪魔がどんどん強欲になり、僕らを闇に飲み込んでしまおうとしたんだ。」
みかんは身を乗り出して訪ねた。
「死後、さらに苦しめられたってこと?闇に飲み込まれるとどうなるの?」
「闇=地獄に全てを飲み込まれると、ファウストとという人物が歴史上の人々の記憶から消しさられてしまう。僕らが僕らだけの存在であればそれも仕方ないと思ったんだ。でも...」
「でも...?」
「僕らのことを人生の貴重な時間をかけて書いた人もいる。作品に短い一生の中の大切な時間をかけて、物語を作り遂げた人、こんな僕らを愛した人、みんなの記憶から消えてしまう。何より、そんな人達の思いがどこかに行ってしまう、それが僕らは許せない。」
悪は黙ってうつむいている。
「それはこのゲーテのこと?ゲーテは60年以上もかけてあなたたちの物語を作ったんやんね?」
わたしはまた某情報サイトを見た。
ゲーテは覚えている。
音楽の授業で習うゲーテの「魔王」は衝撃的だったから。
「そう。ゲーテ以外にもたくさん。僕らは伝説となってたくさん物語が生まれ、演劇などにも影響を与えたんだ。ま、僕らがちょっと決断を謝って悪魔と契約しちゃったせいでこんなことになっちゃったんだけど、悪魔と契約しなかったらこんなに有名になってなかったのかな...って言うか、悪さんが気を許しちゃったんだよ?もうっ」
「やかましいわいっ!」
なんだか信じられない。
そんな人達が目の前に?
騙されてるんじゃないかと今でも思うけど、
一瞬にして使われた魔法や
ぼや~んと、消えたり現れたりできるということは、これは真実なんだろう。
「で、そんなおばけさんがみかんになんの用事なん?」
あ、そうですよね。
クロさん、そうですよね。
わたし眠くて意識を失いそうになってたわ。
魔法治癒で直してもらったけど、頭から流血してたから血も足りてないかも。
あかんあかん。
「わたしの親戚にドイツ人なんかおらんで?うちの御先祖さんドイツ人なん?」
わたしは眠気を覚ますように声を出してみた。
「君の御先祖さまには多分ドイツ人はいないと思うし、御先祖さまは関係ないんだ。
君が母胎にいる時から君のことを知ってるんだ。
ここからは僕らからのお願いになります」
善と悪の顔色が変わった。
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